6月7日(月)、フランスは国外からの投資件数が欧州で最も多い国であることが、アーンスト・アンド・ヤング会計事務所(Ernst & Young, EY)による「魅力バロメーター(Baromètre de l’Attractivité)」で分かりました。
来年、大統領選挙を控えるマクロン大統領にとって良いニュースとなったようです。
2年連続の欧州1位
アーンスト・アンド・ヤング会計事務所は、フランスが2020年に国外からの投資を985件受け入れ、これはイギリスの975件、ドイツの930件を抑えて欧州1位だったことを発表しました。
なお、この調査は海外からの直接投資5600件について、多国籍企業の経営層200名に対して行われたものです。
調査の結果
他国と最も大きく差をつけたのが、工場進出です。特に加工業や工業部門での進出が341件に上り、トルコの153件、イギリスの112件を大きく離しました。
また研究開発拠点の進出に関して、新たに115件の投資元を獲得しました。さらに、雇用創出効果は、2017年と比べて21.6%の増加を記録しました。
環境分野での期待も高い
調査を受けた経営層の58%は、向こう5年でフランスが環境分野での「世界的リーダー」になると予測しています。
好成績のわけは
フランス経済・財務・復興省(Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance)によると、この好成績は、政府がここ4年かけて取り組んできた構造改革の結果によるものということです。
具体的には、法人税の削減、労働市場の改革、研究開発税額控除(crédit d’impôt recherche,CIR:企業が研究・開発活動に財政投資しやすくなる措置)の永続化などです。
加えて、2019年に制定・施行された「企業の成長・変革のための行動計画(PACTE)法」により、企業や投資家が行なう手続きを簡素化したことも功を奏しました。
投資家に好印象、コロナ禍での企業支援
調査を受けた投資家によれば、フランス政府がコロナ禍に対応して行っている経済支援策(「フランス再興」“France Relance”)が、フランスの魅力を維持したといいます。とくに、フランス政府は2020年9月末より、企業や地方公共団体、公共団体に対する財政支援に総額1億ユーロを投じています。
このような支援策に対しては、決して十分ではないという意見も少なくありません。例えば、地方での雇用維持などに苦心する自動車業や製造業などは、とくに大きな打撃を受けています。とはいえ今回の調査では、他のヨーロッパ諸国に比べるとフランスが比較的、安定した投資環境にあると評価されたようです。
喜ぶマクロン大統領、総選挙に向けて
約10ヶ月後には大統領選挙を控えるマクロン大統領は7日、アーンスト・アンド・ヤング会計事務所の発表を受けて喜びを示しました。
1er !
Pour la deuxième année consécutive, la France reste le pays européen qui attire le plus d’investisseurs étrangers.
Une excellente nouvelle avec des répercussions concrètes :
✓ plus d’emplois créés (+ 30 000 !)
✓ plus de relocalisations, notamment dans l’industrie pic.twitter.com/th080Y5WiV— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) June 7, 2021
地方統一選挙では苦戦の現状
5月28日には、地方統一選挙の第2回目の開票が行われ、マクロン大統領が所属する共和国前進(La République en marche, LREM)の苦戦が報じられています。
今回、躍進が目立つのは、フランス第2の都市リヨンや、欧州議会のあるストラスブールで議席数を増やした環境派の政党です。
企業に対する経済政策の成功は、マクロン大統領にとって、来年の総選挙への弾みとなるでしょうか。
執筆あお
参照
フランス経済・財務・復興省 Investissements internationaux : la France reste le pays le plus attractif d’Europe [2021.06.10]
Ernst & Young Global Limited Baromètre de l’Attractivité de la France 2020[2021.06.10]