9月25日(金)、1日の感染者が1万人を超えるなど、新型コロナウイルス感染が急速に拡大していることから、フランス政府は新たな対策として23日(水)パリ市を含む一部地域のバーの22時閉店を発表しました。これを受け、フランス各地で議論が白熱しています。
11都市対象、パリ市猛烈に抗議《0時閉店に!》
オリヴィエ・ヴェラン保健相(Olivier Véran)が発表した「バー22時閉店」の対象になるのは、住民10万人に対する感染者数が150を超える「警戒強化地域」に指定されている地域で、パリ以外にリヨン(Lyon)、ボルドー(Bordeaux)、ニース(Nice)、リール(Lille)、トゥールーズ(Toulouse)、モンペリエ(Montpellier)、レンヌ(Rennes)、グルノーブル(Grenoble)、サン=テティエンヌ(Saint-Etienne)、ルーアン(Rouen)といった地方都市が含まれています。
それでも人々は飲み会をやめない
発表を受け、パリ市助役のエマニュエル・グレゴワール(Emmanuel Grégoire)氏は「バーの22時閉店には懐疑的だ」と語っています。
なぜなら「バーが早く閉まるからといって人々が飲み会やパーティをやめるわけではない。ただ場所を替えるだけだ。ソーシャルディスタンスなど、ルールを遵守して営業されているバーよりも、プライベートの集まりの方が危険」と、その理由を説明しています。
パリ市は「一斉の営業時間短縮ではなく、ルールを遵守しないバーの摘発に労力を割き、もぐりの飲み屋が発生するのを防ぐほうが現実的」として、政府に対し「22時ではなく0時閉店にするよう訴える」ことを決めました。
感染者急増のマルセイユ、レストランやバーの営業禁止は《お仕置き?》
住民10万人に対する感染者数が250を超える地域は、最も感染が活発な「厳重警戒地域」に指定され、感染拡大を阻止するため更に厳しい対策が取られます。
23日、政府はこれらの地域に対し、バー、カフェ、レストランの営業を明日26日より2週間禁止すると発表しました。
対象となるのは、南仏のエクス=アン=プロヴァンス(Aix-en-Provence)、マルセイユ(Marseille)、フランス海外県のグアドループ(Guadeloupe)の3地域です。
これを受け、マルセイユでは「集団罰則だ!」と怒りの声が上がっています。
マルセイユ市長、激怒
マルセイユ市長ミシェル・リュビオラ(Michèle Rubirola)氏は、「今回の政府の決定は、マルセイユ市の現状に当てはまるものではなく、理解不能な政治的アピールにマルセイユ市民が犠牲になることは許されない」と抗議のツイートをし「我が市は事前の打診も受けていない」と、突然の発表に怒りを露わにしています。
これに対し、ヴェラン保健相は「(マルセイユを含む)ブーシュ=デュ=ローヌ(Bouches-du-Rhône)県知事と市の助役に打診した」とし、また「マルセイユ市民を守るためだ」と反論しています。
パリ市で4000人の雇用に影響
バーなどの閉店や営業時間短縮の対価として、政府は対象となる店へのさらなる支援金を約束しましたが、カフェ・レストラン業界の組合の一つ、GNI-サノルカ(GNI-Synhorcat)のマルセル・ベネゼ(Marcel Benezet)会長は、「怒りと共に、大変心配だ」、「パリ市内だけでも4000〜5000人の雇用が失われる可能性がある」と述べています。
騒音に悩むパリ市民は、バーの22時閉店を《大歓迎》
パリのカフェやバーには外のテラス席が多く、特に夏は満席になります。
コロナ禍で、路上の駐車スペースなどにも椅子やテーブルを置く「仮設テラス席」が許可されたことから、今まで外に席が無かった店も一斉にテラス席を作っています。この夏の好天気も手伝って、多くは深夜まで若者で賑わっていましたが、一方で近隣住民は騒音公害に悩まされていました。
今回のバー22時閉店の発表に、住んでいるアパートの1階や、前の通りに流行りのバーがある住民たちは、「もっと早くから実施すべきだった」「今までで一番良い決断」などとSNS上を賑わせています。
執筆:マダム・カトウ