パリの住宅事情と、アパルトマンを購入する際の選び方

2023.03.10

パリ16区の典型的なアパルトマン街写真:パリ16区の典型的なアパルトマン街

パリの代名詞のひとつ、アパルトマン(appartement)。しかしパリでアパルトマンを購入しようと思っても、住宅価格が高騰している現在では気軽に手を出せないことも事実です。今回はそんなパリの住宅事情と、アパルトマンを購入する際の選び方をご紹介します。

 

パリといえばアパルトマン

パリといえばアパルトマンのイメージ通り、市内で売りに出る物件のほとんどが集合住宅です。10万ユーロ(約1440万円/1ユーロ=144円として計算、以下同)程度で買える屋根裏部屋から1000万ユーロ(約14億4千万円)以上するペントハウスまで、さまざまな物件が売りに出されています。

アパルトマンには最初から集合住宅として建てられた物件のほか、もとは貴族などが自宅として建て、その後フロアや部屋ごとに切り売りされているものもあります。後者は「hôtel particulier」(直訳すると「個人所有の邸宅」)と呼ばれて、もともとの豪華な作りを生かして高級マンションとして売られていたりします。高級住宅街とされる6区や7区、16区などにはこの hôtel particulier がたくさん存在します。

7区のhôtel Particulier写真:7区のhôtel Particulier

一戸建てもある

パリ市内にも一戸建ては存在します。パリ中心部でもアパルトマンの中庭に小屋のように建てられていたり、建物の合間の細い通りを抜けると一戸建てが並ぶ広場に出た、なんてこともあります。

また13区や14区、18~20区などパリ中心から遠いエリアには、以前は労働者などが住んでいた家が並ぶ地区があります。当初は郊外のスラムのようなところでしたが、現在は La Campagne a Paris などと呼ばれて高級住宅街になっています。

パリ18区の一戸建て住宅写真:パリ18区の一戸建て住宅

 

パリの住宅価格は上昇の一途

コロナ禍で少し落ち着いたとはいえパリの住宅価格は上昇の一途を辿っており、1㎡あたり平均で1万ユーロ(約144万円)を超えています。パリ中心に近い一桁の区では1万5000ユーロ(約216万円)、高級マンションになると3万ユーロ(約432万円)を超える物件もざらにあります。

一度買って大切に管理している限り価値が落ちにくい優良な財産であるとも言えますが、それが投資家を呼び込んでさらに価格を高騰させているようです。

住宅価格が落ちない背景の一つとして、石造りの頑強な建物が多く自然災害も少ないため、築年数をあまり気にしなくていいというのがあります。

むしろ景観条例や歴史保護要件に厳しく縛られるパリでは、たとえ私有地であっても新しい建物を作ったり建て替えたりすることは実質不可能に近いです。工場跡地の再開発などで珍しく新築物件があったとしても、市場に出回る時点ではすでにすべて売却済ということがほとんどです。そのため築200年などの不動産も高い価値を保ったままやり取りされているのです。

 

物件を探すときは

物件を探す際は、まず自分の好みや治安などを総合的に考えて地区を大まかに絞ります。地区ごとの単位面積あたりの価格はネットで簡単に検索できるため、場所と広さのイメージがあればだいたいの価格は見当がつきます。

そのうえでエレベーターやトイレの有無・洗濯機の設置可否・現占有者の有無など希望条件をもとに選別していき、不動産屋に連絡を取って内見をします。

先日約20万ユーロ(約2880万円)でパリ5区にある約15㎡のstudio(比較的低価格帯のワンルーム)を買った友人は、毎週何十と送られてくる不動産屋の物件情報を見て、半年くらいの間に100件近く内見したと言っていました。それだけ見れば大体の相場も分かってくるようで、最後の方では応相談となっている物件の価格も想像できたそうです。

すごく狭い部屋も多い

ここまでは日本と大体同じですが、日本と違って意外に大事なのが「実際に住めるのか」の確認です。パリでは慢性的な住宅不足の影響で、以前は大きなアパルトマンだったものを部屋ごとに切り売りしていたり、もとはその家の女中さん用の場所だった屋根裏部屋(chambre de bonne=女中部屋)なども売り出されていたりします。

あまりに小分けされていくため、現在では住居として売買できる不動産の最低面積は8㎡とされています。標準的な駐車場1台のスペースが長さ5m×幅2mで約10㎡とすると、それより小さいことになります。特に20万ユーロ以下のstudioには人間的な生活ができるのか心配になるようなところもたくさんあるので、本当に住めるのか内見して確認することは重要なのです。

日本と違うところは

もうひとつ日本と違うのは、陽当たりや方角はフランスでは特に気にされないらしいということです。友人によると、陽当たりの良い部屋であるに越したことはないが、どちらにしろ10月~3月の半年間は天気が悪いし、日光浴は近くの公園に行けばいいので条件には入れなかったとのことでした。

また日本でよく言われる「事故物件割引」のようなものも、相当な場合でない限り存在しないようです。築何百年という建物であれば大なり小なり何かが起こっていることが多く、どこもかしこも事故物件となってしまうからかもしれません。

不動産屋の店構えは日本とあまり変わらない写真:不動産屋の店構えは日本とあまり変わらない

 

安い物件はある?

時々意外なほど安い物件も出てきます。例えば占有者がいるまま売りに出されている物件などです。占有者をすぐに立ち退かせるのは容易ではありません。冬季には追い出せないという法律もあります。ですがたとえば将来子供が独立したときのためになど、すぐに住む必要のない人にとっては魅力的な選択肢となり得るようです。

他にも、一般的に住宅より安い傾向のある商業用の物件を買って住居に改装するのも一つの方法です。住宅が慢性的に不足しているパリでは、この用途変更に関しては比較的簡単に許可が下りると言われています。

不動産屋のショーウィンドーにはたくさんの物件が並ぶ写真:不動産屋のショーウィンドーにはたくさんの物件が並ぶ

 

気に入ったアパルトマンを見つけたら

気に入った物件を見つけたら、次は最大の難関である値段交渉や資金の準備、それに登記手続が待っています。次回記事では、欲しい家を見つけた後の購入手続についてご紹介します。

執筆 Takashi

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