前回記事ではパリの住宅事情と物件の探し方をご紹介しました。今回は、最近パリでアパルトマンを購入した友人の経験をもとに、フランスでの不動産購入手続きをご紹介します。
価格交渉をする
気に入った物件が見つかったら、売主もしくは不動産屋との価格交渉に入ります。感覚的には売主が直接交渉にでてくることが多い気がします。物件の価格には、特に表示がない限り不動産屋に支払う仲介手数料も含まれています。
人気物件であれば入札のようになって当初価格より上がることもあるようですが、平均的には売り出し時の5%引き程度で落ち着くことが多いようです。通常は少し安めの価格を提示して交渉を始めるようですが、あまり下げすぎると売主側が他の希望者に移ってしまう可能性もあり、加減が難しいところです。
私の友人は、最初に5%引きの価格を提示したところ二つ返事でOKが来たためさらに5%引きの値段を提示し、最終的にははじめの提示価格の8%引きくらいの値段で落ち着いたとのことでした。フランスではさまざまな場面でタフな交渉が求められるという一例です。
(写真)同じ建物でもエッフェル塔が見える物件の方が高くなると言われる
公証人のもとで契約手続
価格交渉が成立したら、次に公証人(notaire)を介した手続きに移ります。公証人は契約書の作成、契約書サイン時の仲介、必要な税金の支払、行政機関での登記、購入資金の送金仲介などすべての手続きを行います。日本でいう公証人よりは、むしろ行政書士兼コンサルタントのようなイメージに近いかもしれません。
公証人の事務所はパリであればいたるところにありますが、売主・買主の希望が特にない場合は不動産屋指定のところに持ち込まれるようです。
公証人に支払う手数料は物件の価格をベースに固定されており2.5%〜8%程度。私の友人のように20万ユーロ(約2880万円、1ユーロ144円で計算)以下の比較的低い価格帯の場合は、8%近くを支払うことが多いようです。この手数料の中には、公証人経由で支払う税金や登記手数料、公証人への謝礼などが含まれます。
(写真)公証人の事務所を示すエンブレム。パリでは至るところにある
3ヶ月以内に購入資金を用意
公証人のもとに売主や買主らが集まり仮契約(compromis de vente)が結ばれると、そこから3ヵ月以内にすべての売買手続を終了させる必要があります。ですから買主は仮契約後すぐに資金の準備に取りかからないといけません。
ローンを組む場合は、courtierというファイナンシャルアドバイザーを雇って金利条件の良い銀行を探す人もいます。ただし購入金額の数%をcourtierに支払わないといけないため、これは物件次第です。何百万ユーロ(数億円)という物件であれば金利次第で支払い総額が大きく変わるため、courtierを雇う意義もあるでしょう。友人の場合は比較的低価格だっため、courtierを雇わず自分の口座がある銀行に直行していました。
銀行ローンにも苦労
条件の良い銀行が見つかればローンの申請をします。3ヵ月以内に資金を用意しないといけないわけですが、手続きに時間がかかるフランスのこと、これも一筋縄では行かないようです。
友人も毎日担当者に電話をかけたり、毎週のように銀行に行って催促していました。担当者の動きが遅い時は支店長に直接電話するなど、相当苦労していました。
そのため物件探しの段階からローンの相談を進めるなど、水面下である程度銀行と話をつけている人も多いようです。
資金が用意できたら本契約
晴れて資金が用意できたら公証人の指定口座に送金し、それが確認された時点で本契約に進みます。
仮契約と同様、売主と買主が公証人の事務所に集まって同時にサインをします。契約締結日に物件の所有権が売主から買主に移り、契約完了となります。
友人は鍵の受け取り日が12月23日だったため、人生最大のクリスマスプレゼントだと喜んでいました。
けっこう大変ですが…
このように、フランスでの不動産購入はけっこうタイトなスケジュールの中で複雑な手続きを進める必要があり、またその時々で交渉力を試されます。聞いているだけで面倒にも思えますが、フランスの社会システムを勉強したり、自分のフランス語力を試したりするには絶好の機会かもしれません。金銭的に余裕のある方はパリの不動産、お試しになってみてはいかがでしょうか。
執筆 Takashi