フランス「クリスマスのフォアグラ」に逆風

2021.12.10

フランス「クリスマスのフォアグラ」に逆風

12月10日(金)、フランスでは「クリスマスのご馳走」の定番として欠かせないフォアグラですが、一部の地方自治体で、公的行事のビュッフェや学校給食から排除する動きが広まっています。

 

リヨン市庁舎のパーティ、今年はフォアグラなし

人口52万人を誇り、パリ市、マルセイユ(Marseille)市につぐフランス第3の都市リヨン市では、市役所で行うクリスマス公式行事のメニューからフォアグラが消えました。

昨年の地方選挙で、ヨーロッパ・エコロジー=緑の党(EELV)初のリヨン市長となったグレゴリー・ドゥセ(Grégory Doucet)氏が、クリスマスのほか同市が開催するすべてのイベントから「フォアグラを排除する」と宣言したからです。

理由は、フォアグラの原料であるガチョウの飼育方法が、「動物愛護の観点から非常に好ましくない」からです。

市長はまた、一般のレストランも市の動きに同調してフォアグラの提供を極力減らし、ひいては「停止」することを「期待している」と述べています。

ポール・ボキューズ(Paul Bocuse)など偉大なシェフを輩出し、フランス最大の「美食の街」として知られるリヨンの市長がフランスの高級料理に欠かせないフォアグラに反対しているとは皮肉な話です。

 

ストラスブール市役所でフォアグラ禁止、グルノーブル市も追従

こうした「反フォアグラ」の動きは、リヨン市が最初ではありません。

フランス東部、アルザス(Alsace)地方のストラスブール(Strasbourg)市では、すでに2020年7月からフォアグラを市のレセプションなど公式行事のメニューから外していました。

ヨーロッパ・エコロジー党所属のジャンヌ・バースギアン(Jeanne Barseghian)市長は、動物愛護協会ペタ(PETA)の要請を受け入れた形で「フォアグラ排除」の決定を下していましたが、これまでそれについて公表していませんでした。

今年11月末、バースギアン市長の昨年の決定がマスコミによって報道されると、アルザス地方に10あるフォアグラの生産者、商工会議所や職人組合の間に衝撃が走りました。

アルザス地方商工会議所(Chambre de commerce et de l’industrie d’Alsace)の所長、ジャン=リュック・アンベルゲール(Jean-luc Heimberger)氏は、「一年も前に市長が内密に決めていたことに憤りを感じる」とし、市長に撤回を求めています。

消費者への影響は限定的

一方、生産者は「ストラスブールの街でフォアグラが食べられなくなったわけではなく」あくまで市長の「政治的なメッセージにすぎない」と事態を深刻に受け止めないよう呼びかけています。

ストラスブール市は、毎年恒例の大規模な「クリスマスマーケット(Marché de Noël)」で世界的に知られていますが、昨年はコロナ禍の影響で中止されました。

今年ようやく再開となり、胸をなで下ろしていた販売業者たちは、フォアグラを食べる「伝統」はこれからも続くと、強く反論しています。

南東フランスの人口16万人の都市、グルノーブル(Grenoble)市も、今月頭、市の開催する公的行事や学校給食で、フォアグラの提供を禁止すると発表しています。

 

フランスのフォアグラ市場、年間20億ユーロ

フランスでフォアグラの産地といえば、ペリゴール地方(Périgord)など南西フランスが有名ですが、実は1778年にジャン=ピエール・クローズ(Jean-Pierre Close)というストラスブールの料理人がガチョウの肝臓でパテを作ったのが始まりです。

春に生まれたガチョウの雛が11月にはちょうど成長することから、12月のクリスマス時期にフォアグラを食べるようになり、その伝統がいまに受け継がれています。

ニューヨーク市などですでに禁止

フォアグラが近年問題視される原因は、原料となるガチョウやアヒルの肝蔵を早く肥大させるために、ガチョウの首を掴んで口から無理やり沢山の餌を与える、ガヴァージュ(gavage)と呼ばれる「強制給餌」にあります。

動物愛護の観点から、今回のフランスでの動きよりも前に、ニューヨーク市はいち早く販売を禁止し、英国やデンマークではフォアグラの生産を禁止しています。

伝統か?動物愛護か?経済か?

世界のフォアグラ消費量の実に75%はフランスで消費され、その売り上げ総額は20億ユーロ(約2564億円/1ユーロ=約129円)にものぼりますが、実はフランス人の2人に一人は、残酷な「ガヴァージュ」に反対しています。

「動物愛護か?伝統か?経済か?」の議論がフランスのメディアで白熱しています。

執筆:マダム・カトウ

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