10月15日(金)、本日より新型コロナワクチン未接種者に関して、医師の処方箋または保健所からの要請がない場合、PCR検査および抗原検査が有料となります。また、看護師など医療関係者へのワクチン接種義務が本格化され、未接種者の就業は禁止されます。
フランス全国700万人、ワクチン未接種者への「便宜」が終了
フランスでは、人口6,739万人中約5,000万人が2回のワクチン接種を終えており、現在ワクチン接種対象にもかかわらず未接種の人はわずか700万人程度となりました。
政府は新型コロナ対策の切り札としてワクチン接種を早くから奨励し、他のEU加盟国同様「ワクチンパスポート」を導入しました。現在その効果あってか新規の感染者は減少しています。
ワクチンパスポートは、感染リスクが高いとされるレストラン、カフェなどの飲食店やイベント会場、映画館、博物館などの入場の際に提示が義務付けられ、また医療関係者や飲食業の従事者もこれがないと就業できませんが、2回のワクチン接種を終えていない場合は、72時間〜 48時間以内のPCR検査の陰性証明でも発行されます。
コロナ対策、大量の無料検査からワクチン一本に転換
ワクチンが出回る前、フランスは感染者の早期発見と自主隔離をコロナ対策の要とし、これまで医者の処方箋なしでも検査を無料で何度でも受けることができました。
ワクチンパスポート導入後も、接種していない人はワクチンパスポートの提示が必要な長距離列車やフライトでの移動前や、飲食店で働くためなどの目的で、2日に1回無料でテストを受けることが可能でした。
しかしながら、ワクチン接種が進むにつれ、政府に莫大な費用がかかる無料検査は、ワクチンを無料で接種できるにもかかわらず接種しない人への便宜を図る手段であるとされ、検査の有料化が国会で可決されました。
そのため、本日から抗原検査は22ユーロ(約2,840円/1ユーロ=129円)、PCR検査は44ユーロ(約5,680円)と有料になりました。(料金は検査を提供する医療機関や薬局などによって若干異なり、週末は追加料金がかかります。)
有料化することで確かに政府としては費用削減になり、ワクチン接種を拒否する人に接種を促す手段となり得る可能性が期待されるものの、一方で現在までの新型コロナ対策からの大きな方向転換を強いられることにもなります。
具体的には、無料検査の提供によって今まで可能だった無症状者など「潜在的な感染者」の把握が困難になると考えられます。
ワクチン効果による感染減で自信
検査有料化の陰には、ワクチン接種による今後の見通しが立っていることがうかがわれます。
現在感染拡大は収まっていますが、気温が低い冬に再拡大する可能性を秘めています。しかし、昨年の冬との違いは次の感染拡大が起こっても病院は逼迫しないということです。
フランス健康管理局(Santé publique France)の情報によると、現在の状況はロックダウン終了後の昨年夏の状況に似ています。
現在感染は減少傾向にあり、人口10万人に対し50人未満に落ち着いていますが、今週頭からまた感染がぐっと増え始めています。
今週から感染急増も「想定内」、普通の風邪や気管支炎患者も再登場
これに関して、フランス保健相オリヴィエ・ヴェラン(Olivier Véran)は「(現在の状況は)想定の範囲内であるため、パニックを起こす必要はありません」と出演したラジオ番組でコメントしています。
9月からの新学期で学校も再開し経済活動も活発になったうえ、10月に入り急に気温が下がってきたことがウイルス感染には好条件だからです。
今年の特徴としては、昨年は新型コロナ以外の風邪などは一切流行しなかったのに対し、今年はこういった従来から冬にかけて流行る病気にかかる人が増えてきていることです。
昨年は新型コロナウイルスが他のウイルスを排除してしまうほど猛威を振るっていたわけですが、今年はその威力が弱まっていることがわかります。
介護士1000人〜1500人が退職も、医療機関に「大きな影響はない」
本日より医療従事者のワクチン接種義務が正式施行されました。
9月15日の暫定施行時点では、未接種だった介護士は全体の約0.6%にあたる1万から1万5000人でしたが、昨日までの猶予期間でこの割合は0.3%にまでに下がっています。さらに今日から未接種者は解雇の対象となります。
ヴェラン保健相によると、「どうしてもワクチンを打ちたくない介護士はほんの一部」で、これは「(医療現場の慢性的人手不足を考えると)多いとも言えるし、(数値だけ見ると)少ないとも言える」とコメントしています。
ただ一つ言えることは、「ワクチン義務が国会で議決された時点では、介護士の60%がワクチンを接種していなかったことを考えると、義務化により大きく改善」しています。
これで「病院でクラスターが多発するのは阻止できる」と、保健相は歓迎しています。
執筆:マダム・カトウ