4月2日(金)、フランスの新型コロナ感染状況が深刻化する中、今週末より地域別に導入されていたロックダウンが、3日(土)からフランス全国に拡大されます。マクロン大統領がこれまで「聖域」としていた学校も今回例外とはならず、約2週間のイースター休暇が地域により前倒しされ、更に在宅授業が追加されるなど、就学年齢の子供がいる働く親にとっては再び試練の1ヶ月となります。
「今後1ヶ月間が正念場」マクロン大統領
マクロン大統領は3月31日に行った演説で、明日4月3日(土)から約1ヶ月間、既にパリ、ニースなどに導入されている3度目のロックダウンをフランス全土に拡大し、これに伴い約2週間の学校閉鎖を追加しました。
今回のロックダウンにより、19時以降の夜間外出禁止に加え、商店の閉店やテレワークの徹底、10km以上の移動禁止、地方間の移動禁止が導入されます。
学校での感染が問題視されていたにもかかわらず、大統領はこれまで「学校閉鎖だけは行わない」と繰り返し宣言していましたが、変異種による急激な感染再拡大で対策強化を余儀無くされています。
イースター休暇に合わせ「負担を軽減したつもり」だが
学校閉鎖の影響を最小限に抑えるため、今回発表された期間を2週間のイースター休暇に合わせたことで、実際の「学校閉鎖」は保育園と小学校で実質1週間、中学高校で2週間のみとなります。
問題は、フランスの学校は本来地方ごとにA、B、Cの「ゾーン」と呼ばれる学区に別れており、それぞれバカンスの期間が異なることです。
今回全国一斉に学校の休みを4月12〜24日にすると発表されましたが、元々この期間が休みだったゾーンA以外はスケジュールの変更を強いられることになります。
フランス中部のゾーンBは4月24〜30日、パリ及びイル=ド=フランス地域圏が含まれるゾーンCは4月17〜30日が元々の日程であったため、それぞれ突然の前倒しとなったわけです。
学校のバカンスと重なっているとはいえ、両親共働きが当たり前のフランスにおいて、子供を持つ多くの家庭が対応に追われています。
社員の休暇の変更、「柔軟な対応を」企業に呼びかけ
学校の休みに合わせ既に有給休暇を申請している人に対し、通常企業は日付の変更を拒否する権利がありますが、政府は「日付や期間の変更に関して、前向きに対応するよう」企業に呼びかけています。
テレワークへの政府の圧力は一層高まっていますが、今年に入りフランスでのテレワーク率は26%と一向に増えていないのが現状です。
「地方に住む両親に子供を預けに行く」移動は可能?
ロックダウン期間中は行動制限のため、自宅から10km圏外への移動および地方をまたぐ移動は禁止されます。
しかしながら、10km圏内に子供を預かってくれる人がいない場合、祖父母や親戚宅に送り届けることを理由に例外的に上記の制限を超えて移動することができます。ただし夜間外出禁止の時間帯は除外されます。
しかしながら、急な変更で子供を持つ多くの親が対象になるためこれらの対応には限界があります。
また、企業へのテレワークの圧力が高まりを見せる一方、現実の実施率は26%程度にとどまっていることや、自宅で子供の面倒を見ながら仕事をすることが困難であることから、在宅ワークを希望しない人もいます。
手厚い休業支援
テレワークが不可能な職業に従事し、かつ16歳未満の子供を預けることが不可能な社員に関して、休業を申請することができます。この場合国が手取りの給料の84%まで補償し、企業負担はありません。
「厳しいロックダウンはなし」でこれが最後?
今回のマクロン大統領の演説で特記すべきは「今回の全国的なロックダウンが、その後自由を取り戻すための最後の我慢となるであろう」と、国民に希望を持たせる趣旨を含んでおり、「5月半ばにはカフェやレストランのテラス(屋外)での営業や一部の文化施設、スポーツジムなどの再開」といった具体的な期日についても言及していることです。
ロックダウンの全国への拡大で更なる財政への影響が懸念されますが、今後一ヶ月で感染拡大を阻止できるかどうかによっては、2022年5月の大統領選に大きな影響が出るとあってか、厳しいロックダウンを導入せず、学校閉鎖で辟易する「働く親」への支援を手厚くしたと見られています。
一方、医療現場は現在5000人を超える重症患者を抱えるなど依然として逼迫した状況は変わらず、「厳格なロックダウン」導入を訴え続けています。
この3度目の「緩い」ロックダウンがワクチン接種を進める間の「最後の時間稼ぎとなるか?」が注目されます。
執筆:マダム・カトウ