7月28日(火)、フランスの新型コロナウイルス感染は、現在1日1000人のペースで増えています。夏休みに突入し、フランス各地のリゾート地に多くのバカンス客が滞在していますが、パーティーに参加した若者などの間で感染者が多く出ています。こういった現状を危惧したフランス政府はPCR検査の無料化を発表しました。
クラスターからの追跡、限界に
5月中旬のロックダウン解除以来、フランス政府は各地で発生するクラスターから感染路追跡、陽性者を自主隔離させるという対策をとってきました。しかしながら、7月に入ってもクラスターの数は減るどころか増加の一途を辿っていることから、対策の方向転換を迫られ大量検査に乗り出し、6月には週25万件だった検査数を50万件以上に増やします。
現在の感染状況が以前のピーク時と違うのは、感染者に19歳〜39歳までの若年層が増え、中には重症化する人がいることです。
夏休みに入り、バカンス客が人口の数倍も滞在するブルターニュ地方のビーチリゾート地キブロン(Quiberon)では、若者がビーチに数十人集まって一晩中パーティーを行った結果41人の感染者が出ています。そのうち19人は18歳〜25歳の若者でした。
これを重く見たキブロン市長は、夜間のビーチへのアクセスを禁止しました。また、フランス各地でマスクをつけない若者が多数集まったバー等でクラスターが発生しています。
若者の無責任な行動に、政府《バーの閉鎖》も検討
若者は感染しても無症状であることも多く、マスクを着用しなかったり《ソーシャルディスタンス》を取らないことで感染者が増加しているため、若者の軽率な行動が問題視されています。
フランス全体で「気の緩み」が多々見られることから、感染拡大を危惧するオリヴィエ・ヴェラン(Olivier Véran)連帯保健相(Ministère des Solidarités et de la Santé)は「国民一人一人が責任を持って行動するよう」強く呼びかけるとともに、《部分的ロックダウン》として、バーの営業禁止などを検討していることを公表しました。
54ユーロの検査料、健康保険適用
フランスでPCR検査を受けるためには、これまで医者の処方箋が必要だったことに加え、検査費用の自己負担額は54ユーロ(約6,600円/1ユーロ=約123円)でしたが、今月25日、ヴェラン大臣は「誰でも検査を受けられるよう」医者の処方箋を不要とし、費用を「健康保険で全額負担する」と発表しました。
自宅の近くの検査施設はフランス連帯・保健省のサイトSante.frで郵便番号検索ができます。処方箋無しの検査を受け付けているか、また予約が必要かどうかは検査を行う各医療検査ラボ(注)によるため、電話やメールでの確認が必要です。ちなみにパリ市内で検索すると、数十カ所の検査施設がヒットしました。
ちなみに検査結果が出るまでは3日〜4日を要します。
パリ、セーヌ河岸に無料検査場
パリのセーヌ河岸では、今年の夏も恒例の《パリプラージュ》が開催されています。パリプラージュはセーヌ河岸に砂を入れて作られた人口ビーチで、毎年多くのパリ市民や観光客で賑わいます。この場所に7月18日より特別検査場が設けられ、予約無しかつ無料で検査が受けられます。
検査場、人手不足の解消に医学生も
政府は新型コロナ感染第二波に備えて大幅に検査数を上げたいところですが、検査施設はいずれも混雑しており、無料化されたとはいえ容易に検査が受けられるわけではないのが現状です。
急激な検査需要の増加で検査数が追いついていないため、本来ならラボの生物学専門技師のみが許可されていた検査資格を、ラボのすべての技師にも拡大し、すでに4万人の検査員が増員されました。加えて今回、看護師、消防士、救急隊員、さらに一部の医学生にも資格を与えるなど、人手不足の解消を急いでいます。
(注)フランスには、レントゲン、医療スキャン、血液検査などの検査を専門に行う独立した医療検査施設(ラボラトワール、通称ラボ)が多数存在します。検査内容によってはさらに専門性の高い大学病院などで行う場合もあります。
執筆:マダム・カトウ