9月26日、パリの無名黒人ラッパー、ニック・コンラッド(Nick Conrad)がYouTubeに投稿した「白人を吊るせ!」(”Pendez les Blancs”)の歌詞が「白人差別」と「殺人示唆」で社会問題に発展しているため、ジェラール・コロン(Gérard Collomb)内務大臣(Ministre de l’intérieur)はパリ検察局が調査を開始すると発表しました。
「白人の赤ん坊を殺せ、子供の親は吊るし首」は深い愛のメッセージ?
ビデオの中でニック・コンラッドは白人の男をロープで縛り、銃で脅しながら
「俺は保育園に入って白人の赤ん坊を殺す。さあ早く捕まえろ。子供の親は吊るし首。白人たちの心を引き裂いて、黒人の子供と大人を楽しませよう。奴らを鞭でひっぱたけ、するとおしっこは血のにおい・・・」
と歌っています。
白人と黒人の立場逆転を試みた
ニック・コンラッドはインタビューで「白人と黒人の立場逆転を試みた」と説明し、「これは憎しみの歌詞ではない、深い愛のメッセージ」で「黒人たちのために書いた」と述べています。ちなみに、ニック・コンラッドのツイッターのフォロワーは200人程度、もともと無名のラッパーでした。
「俺は話題になるのをねらってこのビデオを作ったわけじゃない。人々にうわべだけじゃなく、深く考えてもらうのをねらってつくったんだ。俺としてはあえて人種差別を人格化して、人々にショックを与えたかった。だから、なんでうわべだけみて批判されるのか理解できない。」と語っています。
ヘイトスピーチじゃない
「このビデオの内容はフィクションで、その内容の一つ一つが黒人たちが受けた仕打ちだ。だから黒人市民の心に響いている」と、コンラッドは付け加えています。
このビデオが大スキャンダルに発展したことについては、「確かにショックを与えるのが目的だったが、ここまで(反響があるとは)想像していなかった。ただ、人々はビデオのネガティブな部分しか見ていない」と嘆くも、自分が書いた歌詞については「後悔していない」と語っています。
「俺は『お互いにあるがままでいろんな人の違いを受け入れよう』というメッセージを発信したかった。」と述べています。
映画「アメリカン・ヒストリーX」の粗悪なパロディー?
このビデオは映画「アメリカン・ヒストリーX」で、ネオナチが黒人に行った残虐行為を彷彿とさせるシーンが見受けられ、殺人や暴力を誘発する歌詞に英語の字幕までついていますが、全体的には低予算のパロディーといった印象を与え、最後にはマルコムXの言葉を引用して終わっています。「(白人に)人権を尊重させるために払う代償は、死だ」
パリ検事局は「犯罪促進の公衆教唆」で調査を開始
ジェラール・コロン内務大臣は、ニック・コンラッドの歌詞について「深い衝撃を受けた。 明らかに下劣で恥辱的なヘイトスピーチ。人種差別は黒人であれ白人であれフランス憲法違反」であるとし、パリ検事局は「公に犯罪や不正行為を誘発する」疑いで調査を開始すると発表しました。
差別発言エスカレート
昨日から多くのメディアで討論が行われていますが、「人種差別発言」のみならず、「殺人をするように示唆」していることも問題視されています。エスカレートしすぎた昨今の「人種差別発言」を牽制する意味でも、今回のような深刻な問題に対し、右派左派を問わず、法的措置による厳しい罰則を求めています。
YouTubeはビデオを削除したと発表しているが・・
YouTubeはニック・コンラッドの問題のビデオを削除したと公表していますが、シェアされた投稿が未だに残っているようです。
人種差別および暴力誘発要素があるとされている問題のビデオはこちら
※画像はニック・コンラッドのビデオ画像からお借りしました。
執筆:マダム・カトウ