10月16日(金)、先日の14日(水)にマクロン大統領がテレビ演説で発表した、パリを含む8都市圏の夜間禁止にまつわる詳細が発表され、様々な反響を呼んでいます。
夜21時から翌朝6時まで夜間外出禁止、例外あり
ロックダウン中にも例外がありましたが、夜間の仕事をしている人はもちろんのこと、今回の夜間外出禁止中もジョギングや犬の散歩はなどは例外的に認められます。
また、夜間の移動、夜行列車、飛行機に乗るための移動、旅行などは許可されています。
個人の集まり《禁止できず》、苦肉の策
10月6日に「食事を提供しない」バーの営業が禁止されたばかりでの追加措置に、非難の声が上がっています。
バーやカフェが閉まっているため、今度は自宅に大人数集まってパーティをする若者が増え、中には、「友人20人でエアビーアンドビー経由でアパートの一室を1晩借り、パーティーで騒いだ結果アパートの内装をメチャクチャにした」などの問題も出ています。
第二波に突入したフランスでは過去24時間での新規感染者が3万人を超える中、個人が自宅で行う行為の制限が難しいこともあって政府は今回の夜間外出禁止令に至ったようですが、取り締まりを強化するパリ県警では、「逆に個人宅でのパーティが増加する」と懸念しています。
レストラン業界さらなる苦境に、「宅配サービス」は可能
6日の規制強化の発表では営業時間に制限がなかったレストランですが、今回は短縮を強いられます。
今年3月から約2ヶ月間続いたロックダウン、および営業再開後の様々な規制導入で経営難の店が増加する中、政府の打ち出すコロナ対策が「飲食業界ばかりを狙い撃ちにしている」と、業界関係者から怒りの声が上がっています。
パリジャンは「19時に夕飯食べない」、星付きレストランの夜営業「無理」
フランスホテル(レストラン)業界組合代表のフランク・デルヴォー(Franck Delvau)氏は、「夜と週末はレストランの売り上げの大事な部分を占めて」おり、21時閉店なら「星付きレストランなど、店によっては1ヶ月間閉店するところも出るだろう」と話しています。
パリのレストランにおける夜のピーク時間帯は20時30分から1時間ほどで、週末はさらに遅く、21時閉店ならばどんなに遅くとも19時には食べ始めなくてはなりません。夜間外出禁止で21時までに自宅に帰る必要があるということは、更に早く食べ終わらなければならず、時間をかけて食事を楽しむフランスのレストランの営業はかなり困難な状況に陥ります。
政府の補償では「家賃が払えない」、3割倒産?
政府は、今回の決定で打撃を受ける業界には、従業員の休業補償として給与の100%(現在70%)を補償すると発表しました。また、売り上げ減となっている業種の中小企業への支援金も、すでに1万ユーロ(約123万円/1ユーロ約123円)までに上限が引き上げられています。
しかしながら、レストラン業界は政府に対し、営業ができない期間は社会保障費用の会社負担分の免除や家賃補助金など、更に売り上げ減の補填増額を要求しています。
デルヴォー氏は「夜の営業ができなければ、パリの高い家賃が払えない」、従業員の休業補償だけでは「レストランの30%が倒産する」と懸念しています。
劇場は開演早め対処も、パリ市長は「緩和」を陳情
パリの映画館では21時からの上映が人気ですが、今回の措置でプログラムの変更を余儀なくされています。
劇場も、開演時間を早めて対処するところもありますが、上演自体のキャンセルや、開演時間を早めることで来場できなくなる観客への返金などの対応を強いられています。
パリ市長のイダルゴ(Anne Hidalgo)氏は、すでに苦境に立たされている劇場、映画館のための制限緩和を政府に働きかけています。
ノルマンディーの観光地、「パリジャン押し寄せ」懸念、夜間外出禁止で追従
パリの北240キロ、車で約2時間半のノルマンディー地方にあるトゥケ(Touquet、人口約5000人)は、パリジャンに人気のリゾート地ですが、今回政府が出した夜間外出禁止令の対象にはなっていません。
しかしながら、パリの夜間外出禁止を受け、同町にセカンドハウスなどを所有するパリ市民が押し寄せるのを懸念し、迅速に独自の夜間外出禁止令を発令しました。
ちなみに、今回の夜間外出禁止の対象都市は、パリおよびイルドフランス地域圏、グルノーブル(Grenoble)、リール(Lille)、リヨン(Lyon)、モンペリエ(Montpellier)、エクス=アン=プロヴァンス(Aix-en-Provence)およびマルセイユ(Marseille)、サンテティエンヌ(Saint-Etienne)、ルーアン(Rouen)など8都市となりますが、感染状況により順次追加されます。
執筆:マダム・カトウ