9月25日(火)、フランスのマニュエル・ヴァルス(Manuel Valls)元首相が、スペインのバルセロナ(西:Barcelona/仏:Barcelone)の市長選に立候補すると公式に表明しました。それに伴い、フランスの国民議会議員は辞職すると発表しました。(写真はフェイスブックのヴァルス氏の公式ページより引用)
経歴
幼少期~学生時代
1962年、スペインのカタルーニャ(西:Cataluña/仏:Catalogne)地方で、カタルーニャ系スペイン人の父とイタリア系スイス人の母の間に生まれます。本名はマニュエル・カルロス・ヴァルス(Manuel Carlos Valls)。
1980年、18歳で政治活動を開始、学生組合の運動に参加します。
1982年、20歳の頃にフランス国籍を取得し、スペイン国籍とフランス国籍の2重国籍を保有します。その後世界最古の大学の一つであるパリ第1・パンテオン=ソルボンヌ大学(Université Paris 1 Panthéon-Sorbonne)の歴史学部を卒業します。
議員活動
パリ第1大学在学中の1983年から3年間、国民議会議員の秘書を務め、1986年、24歳でイル=ド=フランス(Île-de-France)地域圏議会議員に当選。
1997年には国民議会議員選挙で社会党(Parti Socialiste)から立候補しますが、落選。その後は、1997年から2002年まで、当時のリオネル・ジョスパン(Lionel Jospin)元首相のもとで、広報アドバイザーとして活躍します。
内務大臣を経て首相へ
2012年にフランソワ・オランド(François Hollande)大統領の元で発足した、ジャン=マルク・エロー(Jean-Marc Ayrault)内閣で、2年間内務大臣(Ministère de l’Intérieur)を努めます。その後、2014年に行われた統一地方選挙での社会党の大敗で、マルク・エロ―首相が退任したことをきっかけに、オランド大統領の下で次期首相に任命されます。
大統領選立候補
2016年には、翌年2017年に行われるフランス第5共和制第11回目の大統領選挙に立候補するため、首相を辞任します。2017年1月におこなわれた社会党大統領候補予備選挙第1回投票で、ブノワ・アモン(Benoît Hamon)元国民教育省に次いで2位となり、予備選挙第2回投票では6割近い得票数を得たアモン氏に敗北しています。
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国民議会議員
現在は、パリを含むイル=ド=フランス地域圏の、エソンヌ県(Essonne)第1選挙区の国民議会議員を務めています。
カタルーニャ語で立候補意思を表明
火曜日、ヴァルス元首相は訪問先のバルセロナ現代文化センター(Centre de Cultura Contemporània de Barcelona/CCCB)で、バルセロナがあるカタルーニャ地方の言語、カタルーニャ語で「私はバルセロナの市長になりたい」と述べました。
また、公式ツイッターでもカタルーニャ語とスペイン語で「私は次のバルセロナ市長になりたい」とツイートしています。
“Vull ser el pròxim alcalde de Barcelona”.
“Quiero ser el próximo alcalde de Barcelona”.— Manuel Valls (@manuelvalls) 2018年9月25日
フランス国民議会議員は辞職の意
ヴァルス元首相はまた、「来週、私は全ての国民議会議員としての職務と(エソンヌ)地方の責務を放棄するだろう」とフランス語で述べ、国民議会内でここ数日高まっている議員辞職を求める声に対して、辞職する意を表明しました。
カタルーニャに強い思い入れ
カタルーニャ地方のバルセロナ出身で、「地元」に強い思い入れのあるヴァルス元首相は、度々カタルーニャ独立に対して意見を述べてきました。
カタルーニャ州独立には反対
独立の機運が高まり、独立を問う住民投票がおこなわれた際、ヴァルス元首相は「スペインからの独立は、それはすなわちEU、ユーロ圏からの脱退を意味している。多くの企業が撤退し、(カタルーニャの)経済的な大惨事を引き起こす」と述べ、カタルーニャ州の独立に反対の意を表明しています。
更に、「(独立は)スペイン、ヨーロッパ全体の崩壊を意味する。これはカタルーニャの歴史やアイデンティティに矛盾している。この地域、文化、経済の強みは、ここがカタルーニャであり、スペインであり、ヨーロッパであることだ。もし、このうちどれかが欠けると、カタルーニャはアイデンティティの一部を失うことになる」と、カタルーニャはスペインの一部であることを強調し、カタルーニャ自治政府に対し、スペインを尊重するよう求めています。
フランスの元首相のバルセロナ市長選立候補表明は、フランスだけでなくスペインでも大きく取り上げられています。
執筆:Daisuke