フランス、猛暑で救急病院が悲鳴

2018.08.03

フランス救急病院

フランスでは7月からの猛暑による熱中症などで救急病院に駆け込む患者が後を断ちませんが、今週から来週にかけてさらに厳しくなると予想される暑さに、病院関係者は警鐘を鳴らしています。

 

気温の上昇に比例する患者の数

救急病院医師連盟(Association des médecins urgentistes de France )の代表、パトリック・ペルー医師( Dr Patrick Pelloux )は、「フランスの救急病院は現在危険な状況だ」と話しています。ペルー医師によると、今日から週末にかけて訪れるこの夏最も気温の高い猛暑日の前に、すでに7月頭から救急病院はパンク状態で約8割の科は人員不足という状況の中、これ以上患者が増えるとフランスの多くの地域で壊滅的な状況に陥ります。

一般家庭にエアコンなし、症状改善せず

今週に入り、フランス国内66県で日中の最高気温が30~39度、最低気温が23~27度の熱帯夜となり、救急病院には高齢者、慢性疾患を持つ人、浮浪者などのほか、スポーツ関係者、工事現場で働く人なども詰めかけています。
特に、フランスの一般家庭にはエアコンが普及しておらず、家に扇風機すらない人も多いため、診察後も症状が改善されないことが多々あります。

 

一部の病院で10時間待ち、待合室で倒れる人も

病院の初診で病状を把握しても、適切な治療をする専門の科がパンク状態のため、患者の待ち時間は長くなる一方です。特に75歳以上の高齢者のうち75%の人は入院が必要なケースですが、病棟に空きがありません。ペルー医師は、「政府は公立病院のベッドの数を減らそうとしているが、まさに現状の逆を行っている」と、政府による健康保険庁の赤字減らし政策を批判しています。

こういった状況の中、パリ北部のラリボワジエール病院(l’hôpital Lariboisière) の救急外来では、日によっては10時間待ちの時もあり、患者の一人が待合室待っている間に梗塞で倒れるなど、深刻な事態に陥っています。

 

2003年の悪夢再び?

フランスでは2003年の猛暑で2万人の死者が出ました。救急病院関係者は、今夏の猛暑でこのような惨事が繰り返されることを恐れています。2003年の救急病院の年間患者数は1200~1300万人でしたが、その数は毎年増え続け、今では毎年約2100万人に膨れ上がっており、病院の負担も増える一方です。

 

スタッフは疲弊、政府に見捨てられた感

「現在、政府が「白い作戦」( plans blancs )という緊急事態発令(テロ、災害などで救急患者が極端に増えた場合に政府が敷く緊急体制)をしてもおかしくない状況に達しているが、今の病院はすでにパンク状態で、発令されても対応しきれない」と、救急病院医師連盟は警鐘を鳴らしています。

ペルー医師によると、「医者、看護婦たちは疲弊しきっており、モチベーションは下がる一方だ。この夏のバカンスシーズンに、休暇を取っている一部の病院関係者を病院に連れ戻すのは難しいだろう。深刻な人員不足に陥っているが、我々にはこれ以上打つ手がない。それにもかかわらず、政府はほったらかしだ」と、救急病院現場の窮状を説明しています。

 

フランス各地の救急病院からSOS

救急病院医師連盟には、疲れきったフランス各地の病院からSOSが送られてきます。

猛暑で熱帯夜が続くマルセイユの看護婦は「スタッフが皆疲弊しきっていて心配です」と、連盟に電話で窮状を訴えてきました。ペルー医師は、「彼らはお金が欲しいんじゃない。患者をきちんと治療してあげられる人員がほしいんです」と、現場スタッフの要望を代弁しています。

フランスの救急病院は慢性的な人手不足に悩んでいるものの、一方では赤字解消策として一部の病院では退職者の補充がされないなど、現場スタッフへの負担は増える一方になっています。以前12人いた看護師が現在5人になったマルセイユのティモーヌ(Timone)病院では、病院幹部が人員補充に動かないため、看護師たちが嘆願書を公開し、応援人員の補充を訴えています。

フランス気象庁によると、この猛暑日は来週火曜日、8月7日まで続くようです。

執筆: マダム・カトウ

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