2024年5月31日(金)、フランスでは所得申告の締め切りが住んでいる地域で3つのゾーンに分けられており、ゾーン1と2は終了、パリを含むゾーン3の締め切りは6月6日と迫っています。税務当局(Direction générale des finances publiques:DGFIP)は、申告漏れや資産隠し、脱税の発見にAIを活用することにより、年々調査の効率化と追徴を強化しています。
フランスの資産家トップ100から税収増を狙う
フランス税務当局は、申告漏れ、所得隠しの発見に「ギャラクシー」(Galaxie)と呼ばれるシステムを活用しています。これは、所得に関する個人情報処理を自動化したものです。
1年ほど前、当時公会計大臣(ministre des Comptes publics)だったガブリエル・アタル(Gabriel Attal)首相は「脱税対策大計画」の一環として、フランスに納税義務のある資産家や株取引の大口投資家への税務調査件数を25%増やし、少なくとも2年に1回行うと発表しました。
この大計画を遂行するための重要なツールの一つとして「ギャラクシー」が導入されました。
WEBスクレーピング、データマイニングで詐欺を特定
「データマイニングやデータ探索は、複雑な詐欺の特徴を特定するために、アルゴリズムと人工知能ソフト、プリズムを通じて大量のデータ(ビッグデータ)を分析する方法です」と、富裕税の専門家であるジェローム・バレ(Jérôme Barré)氏は解説します。
注)webスクレイピングとは
Facebook、Instagram、フリマアプリでの所得発見
バレ氏によると、税務署は納税者自身によって公開されたすべてのデータ、つまりSNS(Facebook、Instagram、X(旧Twitter))上やLeboncoin(フランス最大のフリマアプリ)、Vinted(服飾専門のフリマアプリ)、さらにはEbayなどの個人間の販売サイトで共有されたデータを使用することもできます。
※ちなみに、個人で所有物を販売した場合の課税ルールはこちら(仏語)です。
フランス税務当局、南仏でプール探しにAI使用
税務当局にとってAIの利用は今に始まったことではなく、すでに2021年からおこなわれています。
南仏を中心に9つの県、アルプ=マリティム(Alpes-Maritimes)、ヴァール(Var)、ブーシュ=デュ=ローヌ(Bouches-du-Rhône )、アルデシュ(Ardèche)ローヌ(Rhône)、オート=サヴォア(Haute-Savoie)、モルビアン(Morbihan)、メーヌ=エ=ロワール(Maine-et-Loire)、ヴァンデ( Vendée)でAIと航空写真データを駆使し、プールの申告漏れ、もしくは過小評価の是正による追徴をおこなっています。
これにより、2022年は約20,000件の未申告のプールが検知され、新たに固定資産税が徴収されました。
AIで3000憶の追加徴税
データマイニングの活用により、2022年は20憶ユーロ(約3,413億円/1ユーロ=約170円)の追加課税と罰金の徴収が行われています。
2024 年、税務当局は、データマイニングによる税務調査への取り組みをさらに強化し、企業の税務調査の 50%、個人の36% に活用することを予定しています。
執筆:マダム・カトウ