フランスの歴史的外交ディナーなど、メニューコレクション 4600点オークションで売却

2024.06.04

2024年6月4日(火)、フランス人シェフ、クリストフ・マルガン(Christophe Marguin)氏が長年にわたって収集した大統領官邸、エリゼ宮(l’Elysée)の外交ディナーや歴史的ディナーメニューのコレクション4,600点がオークションにかけられ、約8割が落札されました。

 

世界初メニューコレクション、ロシア皇帝から仏歴代大統領、エリザベス女王

ヨーロッパの王朝とフランス共和国大統領官邸で行われた外交ディナーなど4,600のメニューを集めた世界初の驚異的なコレクションです。

メニューを見ると、ツァーリ、外交官、国王、王妃の食卓で、料理の変遷や雰囲気を知ることができます。オークション終了時には、メニューの85%が落札され、総額170,000ユーロ(約2890万円/1ユーロ=170円)となりました。

オークションの目玉、ナポレオン3世のディナーメニューは2,500ユーロ(約425,000円)で落札されました。

これらのメニューは一般公開されることはなく、美食で有名なリヨンで地域のガストロノミーの伝統を守る料理人たちによる『リヨン白いコック帽協会』(Toques blanches lyonnaises)の代表、マルガン氏が長年かけて集めたものです。

マルガン氏は、メニューにどんな料理が書かれているかだけでなく、配膳や食卓のテーブルマナーを含むフランスの料理、ガストロノミーがどのように変わっていったか、そして歴史に刻まれる瞬間の外交儀礼も垣間見ることができることから、収集に情熱を燃やしたといいます。

「最初は奇跡的に1000点まで集め、それが2000、いつの間にか4000にまで増えていました。最初はファイル5冊分を購入、38年間かけて気が付いたらコレクターになっていたんです」と語るシェフ、オークションのスタート価格が1点につき15ユーロ(約2,550円)から30ユーロ(約5,100円)と聞いてよろこんでいました。

 

デザートかチーズか?美食外交の変遷、終日から45分に

国家主席やロイヤルファミリーの公式訪問は、フランスが得意とする美食の職人技を見せる絶好のチャンスでもあります。

その昔、こういった公式訪問の饗宴は終日かけて料理が18段階でだされていたこともありました。しかし現在、大統領官邸での公式ディナーやランチの時間は45分に限定されています。

マルガン氏の話によると、サルコジ大統領(Nicolas Sarkozy)は「時間がもったいない」とチーズを省かせ、次のオランド大統領(François Hollande)は再びメニューに追加させています。

オバマ大統領、「チーズ好き」で外交スケジュールに影響

ノルマンディー上陸作戦70周年記念式典のため来仏したオバマ大統領は、オランド大統領の招待でミシュラン三ツ星のレストラン『ギィ・サヴォア』(Guy Savoy)でディナーを取りますが、デザートの前にチーズを食べたいと言い出したことでオランド大統領のスケジュールを狂わせます。実は次にエリゼ宮でプーチン大統領とのディナーがあったからです。

大統領になると「2回もディナーを食べなくてはならないのか」、とつい余計な考えが頭をよぎりますが、同氏のコレクションのおかげで、ケネディー大統領夫妻、エリザベス女王、パリ滞在中マリニー邸(hôtel Marigny)の庭にテントを張らせたリビアのカダフィ大統領など、公式訪問の際に行われたベルサイユ宮殿でのディナーのメニューを知ることができます。

 

19世紀のナポレオン三世の晩餐会、ヴィクトリア女王から昭和天皇

もっとも古いメニューは、1869年、ナポレオン三世がチュイルリー宮(Tuileries)で行った晩餐会のもので、手書きで書かれています。

中には昭和天皇がフランスを訪問した際の公式ディナー、さらにはネルソン・マンデラ大統領、イラクのフセイン大統領訪問時のものも含まれています。

一部のメニューはシルクの布にプリントされ、世界的に有名な画家が装飾を加えているものもあります。

ちなみにマルガン氏は大統領らのサイン入りメニューに関しては、今回のオークションには出品していません。

鑑定にはイベントの希少性重視

メニューの鑑定を行いオークションを開催したミヨン(Millon)社は、「今回のオークションが特別なのは、155年間の歴史が4,000点ものメニューに記録されていることです」とコメントしています。

同社によると、数千枚のメニューを一同に広げるのも至難の業だったようですが、鑑定には、そのディナーが開催された背景、つまり歴史的、地政学的な意義、出来事の希少さなどが重視され、さらに紙質や装飾も加味されました。

今回のオークションでいろいろなコレクターの手にわたってしまったメニュー、いつの日か一般公開して欲しいものです。

執筆:マダム・カトウ

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