世界一の観光大国フランス ガッカリ度も高いワケとは

2024.06.07

2024年6月7日(金)、フランス政府観光局が世界30か国の29,000人を対象に行ったアンケート結果によると、訪問する外国人の評価がイタリアやスペインよりも低いことが明らかになっています。

 

観光客数は断トツ1位も、満足度は3位

過去30年間にわたり、フランスは世界で最も観光客が多い国の座を保持しています。

美しい村、文化遺産、世界遺産が豊富、ロマンチックなパリの街、地中海の青い海が美しいコートダジュール、モンブランを有するフレンチアルプスなど風光明媚な地方、そしてガストロノミー(美食)など、観光地に必要な魅力のすべてを兼ね備えています。フランスの得意分野である「文化遺産・自然・美しい村・地方のガストロノミー」においては、イタリアとスペインより高く評価されています。

ところが、今回のアンケートでは、世界一のタイトルにふさわしい「満足度」が必ずしも得られていないばかりか、一部の指摘は観光大国の在り方を考えさせられる結果になっています。

その代表的なものは、フランス人はおもてなしの精神が「低い」または「無い」、「料金が高すぎる(だまされた感)」、「治安が不安だった」の3点です。

アンケートの結果が語ることは

今回のアンケート結果からなにを読み取ればいいのでしょうか?
フランス全体のガストロノミーのレベルが下がっているのか、それとも、観光客の半数近くが集中するパリのレストランの質がまちまちなのか?

おもてなし度の低さは、レストランやホテルの採用がままならず、人手不足だからなのか?それとも、イタリアやスペインがクオリティを上げたのか?

ところが、これらの点以外にも、たとえば屋外でのアクティヴィティとして「海水浴」や「文化イベント」などの評価でも南ヨーロッパのライバル2国に劣っているとされています。

 

評価の決め手の「コスパ」「おもてなし」がフランス最大の弱点

旅行する、もしくは旅先を決める際に最も重視されるのは、費用対効果、つまりコスパです。そして旅の思い出に最も残るのは、素晴らしい景色や文化遺産はもとより、現地で受けた暖かい歓迎、例えば、道に迷ったり困ったときに親切な人に出会った、レストランやホテルのスタッフがフレンドリー、などのソフト面ではないでしょうか。

パリのコスパ評価は10点中7.9(世界平均8.1)、おもてなし評価は 7.7(世界平均8.3)と、いずれも世界平均を下回っています。

 

「パリ・スマイル」は起こらなかった、今後2年の観光客数に暗雲か?

海外で「パリジャンは冷たい」とか「笑顔がない」「英語がわかるのに話さない」などの評判を聞くのは今に始まったことではありません。

パリではかれこれ10数年前、「パリは笑顔でお迎えします」(”Paris Vous Sourit “)というキャンペーンまで行いましたが、なんの効果もなかったようです。

ある研究は、アンケート結果でわかるフランスへの印象・認識は、今後2年間、フランスが観光地として世界から取り残されることを意味すると言っています。

今回のアンケートで、今後の旅行先として選ぶ可能性を10点満点で評価したところ、イタリアやスペインは6.6、フランスは 6.3でした。

南ヨーロッパ3国、熾烈な競争

回答者の国籍別でみると、イタリアを選んだ人が最も多かった国は8か国、スペインが6か国、フランスと答えた人が最も多かった国は、ベルギー、スペイン、中国の3か国のみでした。

フランスの最大の難関は、上記に見られるように近隣諸国との競争です。

お隣の2か国と比べ、常に天気がいいとは限らず、物価は高く、施設の受け入れは不親切、海水浴やリラクゼーションは限られている、と、海外の旅行者にみられています。

 

アクセス良好、道路や公共交通、宿泊設備に高い満足度

お隣さんに劣ると評価された観光客の満足度ですが、フランスのトータル評価は8.6、公共交通、道路などのインフラ整備は8.5、アクセスの良さ8.3、ホテルなど宿泊施設の設備の質8.1、といったインフラの良さは高く評価されています。

来月26日からのパリ五輪を目前に発表された厳しい評価ですが、オリンピックをつつがなく行い、高いお金を払って観戦に来る世界中の訪問客を「五輪スマイル」で出迎え、メダルの数だけでなく、世界一の観光地としての意地を見せて欲しいものです。

執筆:マダム・カトウ

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