交通事故による植物状態の男性 裁判所が延命措置命令を下す

2019.05.22

20日(月)、2008年のバイクによる交通事故で脳に重度の損傷を負ったため四肢麻痺となり、植物状態が続いているヴァンサン・ランベール(Vincent Lambert)さんに対する延命治療を再開するよう、裁判所が命令を下しました。ランベールさんの延命治療に関しては、延命治療、または安楽死かで家族の意見が分かれ、法廷で争われていました。

 

ヴァンサン・ランベール事件

2008年8月29日、バイク事故によって重度の外傷性脳損傷を負い、四肢麻痺と遷延(せんえん)性意識障害、いわゆる植物状態に陥ります。その後ランス(Reims)の大学病院に移され、専門チームによる治療を受け、自発呼吸ができ、更に、痛みや感情の感覚、周囲の環境の変化などの認知能力などは失われていないことが明らかになりました。一方で、食事や水分補給は出来ず、生命を維持するために栄養の静脈投与が行われています。

2011年以降、意識が戻ることはなく、水分補給と栄養の静脈投与が続けられていますが、ランベールさんを担当している医師や看護師らによると、トイレケアなどに対する拒絶とも取れる反応が見受けられるなど、わずかではありますが回復の兆候もみられます。

その後、ランベールさんは、スプーンで口に運ばれたものを食べる、声を発するなど、完全な植物状態とは言えない状態まで回復しています。(動画は2015年に撮影さたランベールさんの様子)

安楽死か延命措置か

2013年4月、ランベールさんを担当していたカリジェ―ル(Kariger)医師は、人工的に「生かし続ける」ことは身勝手な理由であるとして、ランベールさんの妻、ラシェル・ランベール(Rachel Lambert)さん同意のもと、徐々に水分補給と静脈投与の量を減らしていきました。

しかし、これはランベールさんの両親や兄弟たちには知らされず決定されたもので、敬虔なキリスト教徒である両親は、これに反発します。

その後、ランベールさんの延命措置をやめ安楽死を支持する、ラシェルさんやランベールさんの兄弟数人と、回復の見込みがあると主張し延命措置を続けるよう求める両親や残りの兄弟との間で、延命治療を打ち切るか続けるか、法廷での争いに発展します。これは、ヴァンサン・ランベール事件(Affaire Vincent Lambert)と呼ばれています。

また、ランベールさんへの延命措置の打ち切り・継続に関して、国連の障害者権利条約特別委員会(Le Comité des droits des personnes handicapées)もフランス政府に対し、法的問題の調査中は、ランベールさんへの延命措置へのいかなる決定も下さないように求めるなど、国際的にも注目を集めています。

(動画は延命措置打ち切りを希望するラシェルさん 2014の動画)

 

裁判所は延命措置を続ける命令を下す

10年以上、ほぼ植物状態が続いているランベールさんに対して、担当医は弁護士を通じて20日(月)に生命維持装置をはずし治療を中止する、と発表しました。しかし、同じ日に裁判所が病院に対し、延命措置を続ける様に命令を下します。

これにより、ランベールさんの延命措置は引き続き継続されることになります。しかし、人間的な尊厳死を求める妻のラシェルさんは、国を相手取り訴訟を起こすことを望んでいると発言しています。

執筆:Daisuke

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