21日(日)、医学を志す若者の最大の関門となっている定数制限「ヌメルス・クラウズス(Numerus Clausus)」の定数が、2019年度は昨年より10パーセント増加することが明らかになりました。大学の収容能力の維持・学生の競争意識を高めることなどから導入されたヌメルス・クラウズスですが、結果として医師不足を招き、2020年には撤廃されることがほぼ決まっています。
ヌメルス・クラウズス
ヌメルス・クラウズスとは、ラテン語で「数を閉める」と言う意味で「定員制限」を意味します。
フランスでは、日本のように大学入試ではなく、バカロレア(baccalauréat)と呼ばれる中等教育認証の国家資格を有していれば、原則的にはどの大学にも入学でき、取得するバカロレアの種類によって、科学系(scientifique)、人文系(littéraire)、経済・社会系(économique et sociale)と分れます。
その為、医学部では希望者の増加で大学の収容能力を超えたこと、更に学生の競争意識を高めることから、1972年、定員制限のヌメルス・クラウズスを設け、2年目の進級前に選抜試験が行われ、人数を大幅に抑える措置がとられています。
深刻化する医師不足
しかし、このヌメルス・クラウズスが原因で、フランスでは現在深刻な医師不足の状態が続いていて、更に、選抜試験による過度なストレスにより学生が学業と私生活を両立できなくなっていることなどから、2019年3月20日、ヌメルス・クラウズスの廃止案が国民議会で可決されました。
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定数の大幅増加
21日に発行された官報(Official Journal)によると、医学、薬学、歯学、および助産の2年目に進級できる人数が2018年比べて10パーセント増加されます。この4課程では、合計14,928枠が設けられ、これは2018年度に比べて1405枠増えています。
内訳は、医学9,314(1,109増)、薬学3,261(137増)、歯学1,320(117増)、助産1,033(42増)となっています。
医師を20パーセント増やす
今回のこの法令は、1年次の年度末試験(première année commune des études de santé /Paces)の数週間前に施行されます。
国民議会で可決されたこの健康保健法の一部は、今年の6月に上院でも審議される予定で、1年次の年度末試験、およびヌメルス・クラウズスは2020年度の新学年から廃止される予定です。
アニェス・ビュザン(Agnès Buzyn)保健大臣(la ministre de la Santé)は「訓練を受けた医師を20パーセント増やすことを目的としている」と述べており、現在の深刻な医師不足の状況を打開できるかが注目されています。
執筆:Daisuke