20日(月)、元交際相手の男性2名の性的指向を本人の同意なしにソーシャルメディア上などに公表した「アウティング(outing)」の罪で、裁判所が29歳の男に対して総額17,000ユーロ(およそ209万円/1ユーロ:およそ123円)の賠償金を支払うよう命じました、と現地メディアが報じました。
事件の背景
21歳と25歳の男性は、それぞれ29歳の男と交際していましたが、破局した際、この29歳の男がインスタグラムのアカウントを作成し、そこに本人たちの同意を得ることなしに、彼らの家族や友人、職業などの情報を公開したうえで、交際中の親密な写真やプライベートなチャットなどを暴露しました。
パリ郊外で、伝統的なイスラム教徒の家庭で育った男性2名は、同性愛者である自身の性的指向を家族にも明かさず生活してきましたが、この29歳の男は、彼らの兄弟や母親、いとこなどに対し、彼らがホモセクシュアルだと言って回ったということです。
プライバシー侵害の罪
男性2名は、2018年の春と秋にそれぞれこの29歳の男を、本人の同意なしで性的指向を公表する「アウティング」をしたとして告訴していました。
5月15日(水)、パリ高等裁判所(Le Tribunal de grande instance de Paris)の判事は、この男に対し、プライバシー侵害の罪で、男性それぞれに10,000ユーロ(およそ123万円)と7,000ユーロ(およそ86万円)の賠償金を支払うよう命じ、更に男性らが支払った訴訟費用も返済するよう命じました。
これに対し、男の弁護士は「彼が行った行為に対し、この罰は重すぎる」と反論しています。
アウティングとは
その人の性的指向を本人の同意なしに他人に明かすことを「アウティング」と言います。特にLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字)といった、性的少数者の性的指向を他人に明かすことを指します。
自分自身の意思で公表する「カミングアウト(Coming out)」とは違い、他人が勝手に第三者に暴露してしまうことを言います。様々な理由から自身の性的指向を公表することができない人にとって、アウティングは彼らの生活基盤そのものを破壊する恐れのある、重大な行為として問題視されています。
日本でもアウティングが問題に
日本でも、2015年に一橋大学法科大学院の男子学生(Aさん)が別の男子学生(Bさん)に恋愛感情を告白した際、告白されたBさんが、Aさんも参加しているLINEのグループチャット内で、「お前がゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめんA」と、Aさんがゲイであることを明かし、それを苦にしたAさんが自殺する、という事件が起きています。
フランスの事件では
今回のフランスの事件で、原告の弁護士は「カミングアウトは、本人の口からしか言うことはできない」とアウティング行為に対して強く批判しています。
また、原告の一人はアウティングされて以降、侮辱的な言葉を浴びせられたりいじめにあうなどしているため、家をでて友人宅に身を寄せているとのことです。
執筆:Daisuke