フランス、2023年ゴンクール文学賞にジャン=バティスト・アンドレア氏の”Veiller sur elle”

2023.11.07

2023年11月7日(火)、フランスの権威ある文学賞の一つ、ゴンクール賞(prix Goncourt)の発表がパリ2区の由緒あるレストラン「ドゥルーアン」(Drouant)で行われ、14回目の投票の末、ジャン=バティスト・アンドレア氏(Jean-Baptiste Andrea)が受賞しました。今年も最終選考に4人の作品が選ばれています。

 

親しみやすい恋愛小説、身分の違う二人の「叶わぬ恋」

ジャン=バティスト・アンドレア氏の『彼女を見守って』(仮題)(Veiller sur elle)は、20世紀前半、ファシズムの台頭するイタリアを舞台に、貴族の娘と貧しい家に育ち彫刻職人の修行に出された若者という、住んでいる世界が何もかも異質の2人の恋を500ページに渡りフレスコ画のように描いた作品です。

アンドレア氏は作品について「叶わぬ」恋愛に着目したのではなく、障害を乗り越えていかに目的に到達するか、という山登りに挑戦する部分に着目して書いたと語っています。

同作品はすでに書店での売れ行きが好評で、大手書店チェーンFnac社が作った同名の賞を獲得しています。

 

最終選考に残った4作品、有力候補だったのはレナール氏

4作品中の一つは、女性作家ネージュ・シンノ(Neige Sinno)が自ら幼少時期の7年間に義父から受けた性的虐待について書いた『悲しい虎』(仮題)(”Triste Tigre”)です。

この作品でシンノ氏は今週月曜日に発表された権威ある文学賞、ファミナ(Le prix Femina)を受賞しています。

フェミナ賞は1904年、ゴンクール賞が受賞最有力候補だった女性作家ではなく結局男性作家に与えられたことを「女性蔑視」と批判した女性誌のメンバーが同賞に対抗して作った賞で、現在も女性の選考員20人によって選ばれた作家に贈られます。こういった経緯があったからなのかは不明ですが、フェミナ賞を受賞した作家でこれまでゴンクール賞を同年に受賞した作家はいません。

そのため、シンノ氏がゴンクール賞を受賞する可能性は低いと見られています。

アンドレア氏の受賞は「サプライズ」

残る3人の作家は、受賞したアンドレア氏を含め全て男性ですが、その中での最有力候補と言われていたのは、『サラ、スザンヌ、そして作家』(仮題)(Sarah, Susanne et l’écrivain)を書いた59歳のエリック・レナール(Eric Reinhardt)です。

対象作品のストーリーは、母として家庭を築き、側からは幸せに見える生活を送っていた主人公が、作家に自分のストーリーを語るという設定で進められます。ある日、夫が自宅の権利を75%持っていることを知った主人公は、夫婦間の経済的な平等を主張するため、数ヶ月間家を空けますが、その間予期しなかった出来事が起こります。

レナール氏はこれまで目立った文学賞とは縁がないものの、書店での評判はよく、ファンの基盤ができています。業界で影響力の強いガイマール(Gallimard)社から出版されている事もあり、商業的な成功は収めていると言えます。

もう一人の候補は、哲学者でエッセイストのギャスパー・クーニク(Gaspard Koenig)です。40歳の同氏は、候補作品『腐植』(Humus)で、人類を脅かす危機的な災害を提起しています。

 

驚きの受賞だったというアンドレア氏の作品ですが、書店でも人気の恋愛小説ならフランス語学習者にも読みやすいかもしれません。

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執筆:マダム・カトウ

 

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