イヴ・サンローランー映画で見る若き天才の苦悩ー

2017.05.30

イヴ・サンローラン

今回も、前回に引き続き、ファッションにまつわる話題から、フランスやフランス語をより身近に感じてみましょう。
今回は、若き天才として名を馳せ、後に「モードの帝王」と呼ばれたイヴ・サンローランについてです!

 

モードの帝王、イヴ・サンローランの生涯

サンローランは、1936年、フランス領アルジェリアに生まれます。その後パリへ引っ越し、17歳の時にはデザイン学校に通う傍ら、ファッションコンクールで最優秀賞を受賞。デザイナーとしての頭角を現します。その受賞をきっかけに、当時すでにトップデザイナーであったクリスチャン・ディオールと出会い、彼に弟子入りします。
サンローランが21歳の時、クリスチャン・ディオールが死去、彼は後継者に指名されます。その後、ディオールの伝統を引き継ぎつつ、自身の革新的なデザインを発表し、脚光を浴びます。
1962年には、公私にわたるパートナーであったピエール・ベルジェと共に、パリにオートクチュール・メゾン「イヴ・サンローラン」をオープン。
その自由で斬新なデザインは絶大な支持を得て、時代を築くデザイナーとなりました。

 

彼が残した作品

・Trapèze(トラペーズライン)
トラペーズとは、台形のこと。当時はウェストをキュッと絞り、スカートをふんわり膨らませる曲線的で女性らしいシルエットが主流でしたが、サンローランは裾広がりで直線的なラインを提案。若々しく新しいこのシルエットは世の女性の熱狂的な支持を得ました。

・Le smoking(スモーキング・ジャケット)
男性用スーツであるスモーキング・ジャケット(タキシード)を女性用にアレンジしたもの。1966年のコレクションで発表され、大きな話題となります。細身でスタイリッシュなデザインはブランドを象徴するアイコンとなりました。他にもサンローランは、サファリ・ルックやミリタリー・ルックなど、男性的なテイストを取り入れたデザインを多く発表し、自由で活動的な新しい女性像を提案しました。

・La robe Mondrian(モンドリアン・ルック)
オランダの抽象画家、ピエト・モンドリアンの作品からインスピレーションを得たこのデザインは、白地のワンピースに、3色の鮮やかな原色で構成された直線の幾何学模様。見るものを驚かせる印象的なデザインで、全世界で最もコピーされたデザインと言われます。アートとデザインを融合させるという試みの先駆けとなりました。

 

映画で見るイヴ・サンローランの苦悩の人生

映画で見るイヴ・サンローラン

さて、ここ数年で、イヴ・サンローランにまつわる映画が立て続けに公開されました。

『イヴ・サンローラン』(2010) ピエール・トレトン監督

『イヴ・サンローラン』(2014) ジャリル・レスペール監督

『SAINT LAURENT/サンローラン』(2014) ベルトラン・ボネロ監督

どれも彼の生涯を知る上で興味深い作品ですが、この中で一番初めに見るなら、お薦めはYSL財団初の公認作品となったレスペール作品。セザール賞最優秀男優賞を受賞した、コメディ・フランセーズのピエール・ニネの好演が光ります。
順風満帆に見えたサンローランのデザイナーとしてのキャリアの陰で、過度のプレッシャーが彼の精神をすり減らしていく様子が丹念に描かれている本作。孤独に苛まれつつ、それでも「デザインで表現することが僕の全てだ」というセリフに現れるように、彼はデザインでその孤独を晴らしていきます。その苦悩の多い生涯を、パートナーであるベルジェの視点を介して垣間見ることができます。

この作品では、彼の生涯だけでなく、当時のコレクションの様子やファッションの変遷、美しいパリの街並みや、別荘のあったモロッコの異国情緒あふれる街並みを見ることもできます。特に、財団の協力によって再現された美しいデザインは必見です。

 

最後に

いかがでしたか?決して古びることのないイヴ・サンローランの革新的なデザイン。そのルーツから多くのことを学ぶことができます。ご紹介した映画3作品は、吹き替えではなく、ぜひフランス語で見てみてください。きっとフランス語の上達につながるはずです!

 

Nahoko
執筆 Nahoko

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