パリはファッションの都と呼ばれ、一流ブランドが軒を連ねています。お値段的にはとても手が出なくても、ショーウィンドーを眺めるだけでも楽しいものです。今回はその中でも、女性の永遠の憧れ、CHANELの歴史をたどりながら、8つのモードボキャブラリーを学びましょう。
創業者ココ・シャネルの人生
CHANELの創業者、ココ・シャネルは、1883年にフランスのソミュールで生まれます。
母親を早くに亡くし、父親に捨てられた彼女は、7年近くを孤児院で過ごしました。彼女の生い立ちはとても困難なものでしたが、孤児院時代に裁縫の技術を学んだことが、彼女の後のキャリアに影響したようです。
彼女のデザイナーとしてのキャリアは当初、小さな帽子店からスタートします。その後、戦争による困難を経験しながらも、順調に事業を拡大し、パリのカンボン通りにオートクチュールのメゾンを開業します。現在も、CHANELの本店はこのカンボン通りにあります。
当時の女性服は、動きにくい窮屈なものばかりでしたが、シャネルは男性服からインスピレーションを得た中性的なスタイルや、着心地の良いファッションを提案し、自由で自立した女性像を生み出していきます。これが世の女性達の熱狂的な支持を獲得し、一躍モードの女王としてファッションの歴史に名を刻む存在となりました。
CHANELはモードの文法である
さて、CHANELの公式サイトには、CHANELの歴史に関する多くの動画がアップされています。今回はその中から、“vocabulaire de la mode”という動画をご紹介します。
この動画はフランス語なので、ファッションに興味のある方のリスニング教材にも最適です!
動画の冒頭に、CHANELはモードの規律(des règles)であり、文法(une grammaire)であるという言葉があります。モードを知る上で、CHANELの存在はそれほどまでに大きいものであるようです。
この動画の中で紹介されている、今やモードに欠かせない8つの定番アイテムをみていきながら、ファッションの歴史を紐解いてみましょう。
CHANELが生み出した定番アイテム達
1. Le sac(ショルダーバッグ)
ダイヤモンド型のキルティング素材に、チェーンのついたショルダーバッグはCHANELの定番中の定番。当時は肩紐のないハンドバッグが主流でしたが、両手が使えないことを不自由に思ったココ・シャネルが、革紐のついたバッグをデザインしたことが、このタイプのバッグの始まりと言われています。
2. La petite robe noire(リトルブラックドレス)
こちらも定番アイテム、ブラックドレス。修道院の制服にインスピレーションを受けたこのスタイルは、コルセットで締め付けない新しいシルエットを生み出しました。さらに、当時、喪服とみなされていたブラックドレスを、女性を美しく輝かせるファッションアイテムへと昇華させました。
3. Les bijoux couture(コスチュームジュエリー)
貴金属ではない素材によって作られたジュエリーを指します。素材にかかわらず、洋服とマッチしたジュエリーを身につけることが大切だという考えから生まれました。ヴェネツィアやビザンティンの影響を受けたジュエリーは、教会のステンドグラスのように、どのような服も美しく照らします。
4. Le camélia(カメリア)
ドレスや靴につけられた椿のモチーフ。シャネルは自身のエンブレムとして使用しました。コットンやレザー、シルクなど、どの素材ともマッチし、装いにきらめきを与えます。
5. Les chaînes (チェーン)
シャネルは、ベルトやブレスレット、ネックレスにもこのチェーンを取り入れました。ジャケットの縁の内側に縫い付けられたチェーンは、完璧なシルエットを作り出します。
6. Les souliers bicolores(バイカラーシューズ)
ベージュと黒の2色で構成されたバイカラーシューズ。2色の理由は、ベージュが足を長く見せ、黒は汚れを隠し、足を小さく見せると考えられたため。完璧なシルエットと色を求めたシャネルのこだわりが感じられます。
7. Les perles(パール)
首元を飾るシンボル、幾重にも連なるパールは、シャネルの定番であるブラックドレスの美しさをより引き立てると考えられています。
8. Le tweed(ツイード)
こちらもCHANELの定番、ツイードジャケット。もともとは男性が狩猟の際に着用していた素材を、シャネルが女性用の着心地の良いジャケットとしてデザインしたものです。流行に左右されない、女性の永遠の憧れです。
最後に
いかがでしたか?ファッションアイテム一つを取っても、そこには様々な歴史と革新的なアイディアが存在しているのですね。それらを知ることで、モードに関わるフランス語がぐっと身近なものになるのではないでしょうか。ファッション好きな方は、ぜひ、フランス語学習にも役立ててください。
執筆 Nahoko