秋が深まり、冬の到来を感じる時期にフランス語で詩を読んでみるのはいかがでしょうか?今回は晩秋に読みたくなるジャック・プレヴェールの詩を2編ご紹介します。
詩人ジャック・プレヴェールとは?
ジャック・プレヴェール( Jacques Prévert )は1900年にパリ近郊で生まれた詩人です。詩だけではなく映画「天井桟敷の人々」の脚本や童話なども手掛け、幅広く活動しました。多くのシャンソンの歌詞にも使われ、フランスで最も親しまれている詩人の一人です。
シャンソンの歌詞にもなった「枯葉」
これからご紹介する「枯葉」( Les feuilles morts ) は今年9月に亡くなったジュリエット・グレコも歌ったシャンソンの歌詞になっています。1945年にジョゼフ・コズマが作曲したものにプレヴェールが歌詞をつけました。終わりを迎えた恋人たちの関係を秋の冷たい風にさらわれていく枯葉と重ね、しみじみとした切なさを感じる詩です。
多くのミュージシャンがカバーしているので耳にしたことがある方も多いかもしれません。YouTubeなどでも聴けますので、歌詞を味わいながらぜひご堪能ください。
“Les feuilles morts“ JACQUES PRÉVERT
Oh ! Je voudrais tant que tu te souviennes
Des jours heureux où nous étions amis.
En ce temps-là la vie était plus belle,
Et le soleil plus brûlant qu’aujourd’hui.
Les feuilles mortes se ramassent à la pelle.
Tu vois, je n’ai pas oublié…
Les feuilles mortes se ramassent à la pelle,
Les souvenirs et les regrets aussi
Et le vent du nord les emporte
Dans la nuit froide de l’oubli.
Tu vois, je n’ai pas oublié
La chanson que tu me chantais.
C’est une chanson qui nous ressemble.
Toi, tu m’aimais et je t’aimais
Et nous vivions tous deux ensemble,
Toi qui m’aimais, moi qui t’aimais.
Mais la vie sépare ceux qui s’aiment,
Tout doucement, sans faire de bruit
Et la mer efface sur le sable
Les pas des amants désunis.
訳:「枯葉」ジャック・プレヴェール
ああ!思い出して欲しい。
僕たちが恋人だった頃の幸福な日々を。
あの時、今よりもっと人生は輝いていて、
陽はもっと強かった。
枯葉は掬えるほどに積もっている。
知ってるだろ、僕は忘れてない…
枯葉は掬えるほどに積もっている、
思い出も後悔も
北風が運び去っていく
忘却の冷たい夜のうちに。
君が僕に歌っていた歌。
僕たちに似ている歌。
ねえ、君は僕を愛していて、僕は君を愛してた。
2人で生きていた、
僕を愛した君、君が愛した僕がいた。
でも、人生は愛し合う2人を引き離す。
とても静かに、音もなく。
そして、海は砂に消える
別れた恋人たちの足音のように。
実在するパリの公園が登場する「庭園」
プレヴェールからもう一編「庭園」( Le jardin ) をご紹介します。冬のパリが舞台となる詩で、プレヴェールの代表作「ことばたち」( Paroles ) に収録されています。また、この詩に登場するモンスリ公園はパリ14区に実在し、とても自然あふれる場所です。
短い詩ですが、ひとつの公園の澄んだ空気の中で愛し合ったほんの一瞬が永遠となるという壮大さを持つ詩です。公園からパリ、パリから地球、地球から星へと規模が大きくなっていくのも素敵ですね。
“Le jardin“ JACQUES PRÉVERT
Des milliers et des milliers d’années
Ne sauraient suffire
Pour dire
La petite seconde d’éternité
Où tu m’as embrassé
Où je t’ai embrassée
Un matin dans la lumière de l’hiver
Au parc Montsouris à Paris
À Paris
Sur la terre
La terre qui est un astre.
何千年、何万年過ぎたとて
とても言葉にできないだろう
君は僕に口づけし、
僕が君に口づけをした
あの永遠の瞬間を
冬の光に満ちた朝
パリ、モンスリ公園でのこと
パリの中
地球の上
ひとつの星である地球の上で
まとめ
今回は冬の訪れを感じさせる詩を2編ご紹介しました。今はコロナウイルスの影響でフランスに行くことが難しい状況ですが、この2編の詩でパリの冬を感じられると思います。2編とも拙訳でお届けしましたが、みなさまもぜひご自分で訳してみてくださいね。
執筆者 ちはる