2025年1月21日(火)、フランスの若者の間で性による溝が深まる一方だと、フランス男女平等評議会(Haut Conseil à l’Égalité entre les femmes et les hommes:HCE)が最近の調査結果から警鐘を鳴らしています。
「#MeToo」運動から深まる男女の溝
アメリカで2017年に始まった性暴力をSNS上で告発する運動「#MeToo」、フランスでは女性ジャーナリストが「#BalanceTonPorc(豚を告発せよ)」と名付け広まり始めましたが、この頃からフランスでは性による役割分担を巡って男女間の溝がいよいよ深まり始めた、とHCEは分析しています。
同機関が発表した最新の指標によると、調査対象になった15歳~24歳の若い女性のほぼ全員(94%)が、「女性であることは男性であることより大変」と答えたのに対し、男性の方は68%にとどまっています。
逆に「男性であることは大変だが、女性であることはそうではない」の質問に「はい」と答えた女性はわずか5%、男性は11%でした。ちなみに25歳~34歳の男性では13%に増えています。
これについてHCEの代表、ベランジェール・クイヤール(Bérangère Couillard)氏は、若い男性は「いっぱいいっぱいで、存在価値を脅かされている」と感じていると分析します。
若い男性ほど「保守的」かつ「性差別的」傾向
こういった男女の隔たりは「#MeToo」運動以降、顕著にあらわれ始めています。たとえば、世論調査会社Ifop社が2019年に行った調査では、若い男性が「より保守的かつ女性蔑視的」であるという結果がでています。
男は仕事、女は家に
アンケートの対象になった男性のうち、18歳~24歳の実に40%が「現代社会において、女性が権力を持ちすぎている」と回答しています。ちなみに男性全体では19%でした。
同じく18歳~24歳の男性の3分の1以上(35%)が「男の役目は外にでてお金を稼ぐこと、女は家事と家族の世話をすること」だと答えており、やはり男性全体の16%を大きく上回っています。
性差別、社会に根差した「決めつけ」「固定観念」
性差別は日常生活に浸透している部分もあり、「差別」だと明確に認識されていないことも多々あります。
たとえば、男性の調査対象者全体の25%が、「男性にとって妻やパートナーが別の男性と会うのを拒否する」ことに「どちらでもよい」(13%)または「あたりまえ」(11%)と答えています。
女の子はピンク、男の子はブルー
やはり4分の1の対象者は、「女性は車の運転ができない」といった、性別による決めつけ、ステレオタイプ化したジョークに特に反感をもっておらず、半分の人は企業における「男性ばかりの会議」も不思議に思っていません。
また、「男の子はトラック、女の子はお人形」のおもちゃを与えることも26%の男性は「普通のこと」だと答えています。
一方女性の60%は「女は〇〇だ」といった固定観念によるジョークで「不愉快な思いをした」と答えています。
「同意なき」性交渉、男性に認識乏しく
HCEが危険視しているのは、性交渉に関し、女性の40%がパートナーと「同意なき」状態を経験したと答えていることです。さらに問題なのは、男性側ではそういった「行動にでた」と答えた人はわずか26%だったことです。つまり男性が「同意がなかった」と認識していないわけです。
女性の大統領には「賛成」、男女の隔たりは縮まるのか?
若い男性の保守化が進むなか、フランス国立視聴覚研究所(Institut national de l’audiovisuel:INA)の調査では、「#MeToo」という単語がフランスのメディアで使用された回数は、2017年以降毎年倍増しており、HCEは今後にとって「明るい材料」であるとの見解を示しています。
また、調査対象になった男女のほぼ全員(91%)が「女性が大統領になること」を支持しています。また、84%の人が「妻が夫より稼ぎが良い」ことも承認しています。
また、非営利団体「ラファミーユ」(la Famille)のアンケート調査で、対象者のほぼ全員が学校における性教育や異性に対する敬意、「同意とは」といった授業を行うことに賛成しています。
執筆:マダム・カトウ