2024年10月25日(金)、明後日27日(日)の午前3時よりフランスおよびEU加盟国は現在の夏時間から冬時間に変わります。時計を1時間戻し、午前3時が午前2時になり、朝寝坊ができることになりますが、日本との時差は1時間増え8時間になります。つまり日本の朝10時はフランスの午前2時です。
夏時間導入から48年、節電が目的だったが
ヨーロッパでは夏になると最も日が長い6月には夜11時近くまで明るいことから、主に電気代節約のためサマータイムが各国に導入されました。フランスもすでに50年近く毎年3月最後の土日にかけて夏時間に変更、時計を1時間早め、10月最後の土日に1時間戻し冬時間にしています。
夜でも遅くまで明るいため、仕事が終わった後もスポーツをしたり、カフェのテラスで遅くまで飲んだりとフランス人は夏時間が良いとする人が過半数を越えています。
しかしながら、当初の目的だった節電に関しては毎年疑問の声が上がっています。フランス政府機関である環境・エネルギー局(Agence de l’environnement et de la maîtrise de l’énergie:Ademe)の推定によると、夏時間の導入による節電は2022年の時点で351 GWh、フランスの全電力消費量のわずか0.07%のみでした。
電球の進化で節電効果はわずか
1996年には1200GWhだった節電効果は、2009年には440GWhと激減しています。主な理由は電球のパフォーマンスが向上したことで、LEDの導入で今後も照明による節電効果はさらに減るとみられています。
1973年〜74年のオイルショックで節電の必要性が高まり、フランスでは1976年から夏時間への変更が現在まで続いています。1998年には、EU加盟国内でバラバラだった時間変更日が同じ日に統一されています。
欧州内では夏時間への時間変更を廃止する動きがありましたが、2020年のコロナ禍で議論は中断したままになっています。
冬時間への変更後の数日間で、交通事故による歩行者死亡42%増
冬時間に変更すると、日没時間が1時間早まります。
前日まで18時に日が沈んでいたのが、翌日から17時という具合に早まります。
そのため、毎年時間変更直後の数日間、17時から19時までの2時間で歩行者、特に薄暗いと目が見えにくい高齢者が交通事故に遭うケースが急増します。
フランスの交通事故の中でも歩行者の死亡事故の半分は、10月~1月の4か月間、最も日が短い時期に集中しています。
「道が薄暗い」、視界不良による交通事故多発
統計によると、自転車利用者の90%、キックボード利用者の87%、バイク利用者の86%、歩行者の82%が時間変更に関係なく公道で身の危険を感じています。
これらの利用者の19%が「視界不良が理由で交通事故に遭った」と答え、34%が「遭いそうになった」と回答し、61%は公道における様々な交通手段の「共存が困難」だとしています。
そもそも「視界」に関する注意不足
日が短くなったことで、交通事故から身を守るためにどういう行動をとっているかの質問に、「歩道を利用する」と答えた歩行者は73%、「蛍光色の装備をつける」と答えた自転車利用者はわずか50%、キックボード利用者の45%、バイク利用者の38%はライトをつけず、自転車利用者の41%は自転車のライトが付くかのチェックもしていません。
平常時もかなり危険なフランスの公道、冬時間変更後は特に注意が必要です。
執筆:マダム・カトウ