2023年10月13日(金)、本日昇給と給与の男女平等を要求するストが行われ、午後には全国200箇所でデモが予定されています。パリ・オルリー空港(aéroport d’Orly)では一部の管制官のストで大幅なフライトキャンセルが発生し、フランス国鉄(SNCF)では地方路線TERおよびパリと近郊を結ぶ急行鉄道RERの一部に乱れが出ています。中学、高校の教員のストにより一部の学校で休講、さらに今回は開業医も診察料の値上げを訴えストに参加しています。
オルリー空港発便40%減、マルセイユ空港発も20%減
主に国内線、アフリカ路線、ローコスト航空が発着するフランス第二の空港における本日のストは、航空管制官組合の中でも少数派のウサックCGT(Usac-CGT)の呼びかけによるものですが、その影響は大きく、フランス民間航空管理局(Direction générale de l’Aviation civile:DGAC)は、今週月曜、各航空会社にオルリー空港発着便の4割をキャンセルするよう通達しています。
さらにマルセイユ・プロヴァンス(Marseille-Provence)空港発で20%、パリの北約90kmにあるボーヴェ(Beauvais)空港発で15%のフライトがキャンセルされています。
高速鉄道TGV平常運行、一部地方線、パリ郊外線に影響
フランス国鉄では主要3組合が、「給与の緊縮、雇用喪失、公共サービスを解体する政策に終止符を打つ」をスローガンにストを呼びかけました。
ストの影響は春の年金改革反対ストの規模には及びませんが、通勤通学の足として欠かせない交通網が間引き運転により各地で乱れています。
パリ地下鉄も通常運行
パリ市内では、RER C、D線が3本に2本に間引きされている他、一部の路線に影響が出ていますが、パリ地下鉄は通常通りに動いています。
開業医もストライキに参加のワケ
フランスの医者の大半は、自営業の医師(médecin libéral)と呼ばれる事業形態を取っており、日本での開業医にあたります。
大病院も、公立病院の医師は公務員ですが、それ以外の医師は社員扱いの「勤務医」ではなく自営業医として勤務していることがほとんどです。そのため、「ジェネラリスト」(médecin généraliste)と呼ばれる、開業内科医だけでなく、私立病院内の外科医など専門医もこれにあたります。
今回のストに参加した、医師の12の組合連合の一つ「ブロック」(Bloc;手術室の意)と呼ばれる外科医組合代表のフィリップ・キュック(Philippe Cuq)氏は、「政府に対し強いメッセージを送るために本日ストを決行する」と発表しています。
本日のストに参加する病院、医師による全ての専門治療はストップし、手術は延期され、救急患者は全て公立病院に転送されます。さらに、医師は夜勤も行わず「生命に関わる」ケースのみ対応すると発表されています。
自由業医師の組合加入率はわずか10%であることから、ストの影響については不明ですが、キュック氏は「組合員以外の多くの医師が参加するだろう」と述べています。
開業内科医診察料値上げ、6年間でたったの1.5ユーロ、再交渉に圧力
このタイミングで開業医がストを決行する理由は、近々行われる社会保障局 (Sécurité sociale)との診察料値上げ交渉の下地を準備するためです。
開業内科医の診察料は現在25ユーロ(約3,950円/1ユーロ=158円)ですが、この11月から26.5ユーロ(約4187円)と、わずか1.5ユーロ(約237円)の値上げにとどまっています。(ちなみにフランスでは、この診察料は基本的には全額医療保険で負担され、個人負担はありません)
しかも最後に診察料が値上げされたのは2017年に遡り、医師だけでなく政府も社会保障局も11月からの値上げが「まったくもって不十分」であることを重々承知しています。
医師組合連合は、政府の対応によっては「ストの延長も辞さない」と強硬な姿勢を見せています。
執筆:マダム・カトウ