2023年８月１日（火）、８月に入りさすがにパリの街も住宅地はひっそり、パン屋やカフェなど個人商店は軒並みバカンスで閉まっています。そんな中、マクロン大統領夫妻も毎年恒例の夏のバカンスに入りました。多くのフランス人が最低でも３週間は休むのに対し、たった数日間の短い夏休みです。
マクロン大統領夫妻、今年も南仏の旧大統領専用リゾートへ
「バカンスに行くために仕事をする」と行っても過言でないくらい、フランス人にとって夏のバカンスは大切なものです。
庶民より期間はずっと短いとはいえ、大統領も例外ではありません。
今年もマクロン大統領夫妻は、歴代の大統領がバカンスを過ごした南仏、ヴァール県（Var）のブレガンソン砦（fort de Brégançon）と呼ばれる小さい要塞で数日間過ごします。
ブレガンソン砦は、ボルム＝レ＝ミモザ（Bormes-les-Mimosas）という人口８千人弱の小さな自治体に属する半島で、長い間フランス大統領専用のリゾート地でした。
ド・ゴール大統領が大統領官邸に認定
この地に最初に泊まったのはシャルル・ド・ゴール大統領（Charles de Gaulle）で、1964年の８月25日にプロヴァンス地方上陸作戦記念式典に参加するため一泊しました。
一泊しかしなかったのは、身長196cmと長身の大統領にはベッドが小さすぎ、さらに蚊が出たからですが、その後1968年に南仏で海外からの要人を迎える場所として大統領官邸の一つに認定され、海兵隊の建築家ピエール＝ジャン・グート（Pierre-Jean Guth）が改装を手がけました。
ブレガンソン砦、仏歴代大統領と海外の要人たち
大統領専用とはいえ、歴代の大統領の好みはまちまちで、必ずしもブレガンソン砦で夏のバカンスを過ごしたわけではありません。
ポンピドゥー大統領は（Georges Pompidou）はいたく気に入り、デザイナーやアーティストを呼んで家具などを見直し、メディアを招待して砦の中を撮影させ公開しています。
ジスカール・デスタン大統領（Valéry Giscard d’Estaing）も、やはり気に入って家族でバカンスを過ごしています。
「気に入らなかった」ミッテラン、仕事で利用
ミッテラン大統領（François Mitterrand）はあまり好きではなかったようですが、それでも1986年から夏に会議などを行うために利用し、87年にはストライキ中のフランス国鉄の職員を呼んでいます。
またアイルランドのフィッツジェラルド首相（Garret Fitzgerald）、西ドイツのコール首相（Helmut Kohl）を招待しています。
砦のあるヴァール県で幼少時を過ごしたシラク大統領（Jacques Chirac）は、特に気に入っていたようです。
サルコジ大統領（Nicolas Sarkozy）は、2008年ロシアのグルジア侵攻問題を議論するために訪れた米ライス長官（Condolezza Rice）を招待しました。
オランド大統領、「大統領専用官邸」から一般公開へ
オランド大統領（François Hollande）は、特にブレガンソン砦に思い入れがなかったのか、大統領の経費削減目的か、大統領官邸の認定を解除し、国の文化遺産へと移行します。
フランスの有形文化遺産を管理する、国立文化遺産センター（Centre des Monuments nationaux）の管理下に置きました。
こうしてブレガンソン砦は、一般公開されるようになりました。
マクロン大統領、19年にプーチン大統領招待
５月の連休でも夫婦で訪れたマクロン大統領は、先週末から砦に滞在、海岸沿いを愛犬ネモ（Nemo）と散歩しているブリジット夫人の写真が、早速地元の新聞の一面を飾っています。
夏休みとはいえ、大統領の仕事に必要な機器は完備、2021年のアフガニスタンで起こったタリバンによるカブール侵攻の際、大統領はこの砦に滞在中でした。
ちなみに、マクロン大統領が招待した海外要人には、2018年にイギリスのメイ首相（Theresa May）、2020年夏にドイツのメルケル首相（Angela Merkel）の他、2019年、ビアリッツ（Biarritz）で開催のG7に出席するため来仏したプーチン大統領も含まれています。
執筆：マダム・カトウ
