2022年フランス出生率1.80 低下が続く原因は?

2023.01.18

フランス語 出生率2022年、フランスでは1946年以来最低の出生率を記録しました。どのような背景があるのでしょうか?

 

2022年版 人口統計

1月17日(火)、フランス国立統計経済研究所(Institut national de la statistique et des études économiques:INSEE)は2022年版の人口統計を発表しました。

人口0.3%上昇

2023年1月1日の時点でフランスの人口は6800万人、前年より0.3%増加しました。

出生率1.80 再び減少へ

2022年にフランスで生まれた赤ちゃんの数は72万3000人で、2021年より1万9000人減少し、2020年11月と同水準になりました。

2021年には、6年連続の減少が食い止められたかのようであったところ、今回また減少となり、減少率も過去最高水準です。

出生率についても、2021年には1.84を記録しましたが、2022年には1.80に後退しました。

平均寿命 男性は79.3歳、女性は85.2歳

2022年に亡くなった人の数は66万7000人で、2021年より5,000人増加しました。死亡数が増加した原因は、高齢化、コロナウイルスの流行、また夏の猛暑と考えられています。

平均寿命は男性が79.3歳、女性は85.2歳です。この数値は、2021年と同水準であり、2019年よりも0.4歳少なくなっています。

婚約、PACSは増加

2022年の婚約件数は24万4000件でした。コロナ禍中に延期していたカップルが婚約したと見られています。

連帯市民協約(PACS)の数は20万9000件で、1999年に制度化されて以来、過去最大でした。
*「性別に関係なく,成年に達した二人の個人の間で、安定した持続的共同生活を営むために交わされる契約」を指します。

 

出生率減少の原因

INSEEの調査員カトリーヌ・スコーネ(Catherine Scornet)氏によれば、2022年に再び人口が減少した主な原因は、社会の不確実性や、収束しないコロナ禍など、複数あるといいます。

マクロン政権下のフランスでは、2021年7月より父親の育児休暇日数が、従来の2倍の28日に増やされ、1週間は義務化されるなど、少子化の問題に取り組んでこなかったわけではありません。

しかし、終わりの見えない経済不況やコロナ禍によって、結婚や出産を先延ばしにするカップルが増えています。

30歳以下の出生率低下が止まらない

スコーネ氏によれば、2010年代の人口減少は、以上のような出生率の低下により引き起こされる、重大な問題です。これは、1990年代のベビーブーム後の人口減少とは性質が異なるといいます。

フランスでは2000年以降、30歳以下の出生率の減少が止まりません。この傾向が、出生数の全体的な低下につながっているのかは定かではありませんが、ひとつの要因と考えることは可能だと言われています。

「子どもをもたない」選択肢

とくに1960年代から個の尊重や、女性の民主的権利の獲得と自立のための運動が拡大し、フランスでは「子どもをもたない」ことがひとつの選択肢として受け入れられるようになってきました。

2010年の調査によれば、とくに独身かつ学位をもつ女性が、この選択をすることが多いとのことです。このような女性は、勉強に長い時間と労力を費やし、子どもをもつという以外のさまざまな選択肢をもつと考えられています。

一方で庶民層の若い女性は、子どもを得ることで社会的な地位を確立し、保護者から独立し、自立を得る傾向があるようです。

執筆あお
INSEE Bilan démographique 2022
在フランス日本国大使館 PACS(連帯市民協約)ついて
JETRO ビジネス短信 2021年7月から出産時の父親休暇日数が現行の2倍の28日に

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