11月22日(火)、今年で第162回となるブルゴーニュ(Bourgogne)地方のボーヌ(Beaune)で行われるワイン祭り「栄光の3日間」(Les trois glorieuses)が今月18日〜20日に開催されました。そのメインイベントで、500年の伝統を持つオスピス・ドゥ・ボーヌ(Hospices de Beaune)のチャリティーオークションでは、今年の売り上げが3100万ユーロ(約45億円/1ユーロ=約145円)となり、2018年の記録を更新しました。
干ばつでも豊作、売り上げ2018年の倍
今年の売り上げは2,900万ユーロ(約42億円)(販売手数料を除く)に上り、これまでの過去最高記録だった2018年の1,397万ユーロ(約20億3000万円)の倍以上となっています。
チャリティーオークション会場となっているレ・アル・ドゥ・ボーヌ(les Halles de Beaune)に集まった800人の買い手からも「素晴らしい」「信じられない」などの声があがり、大盛況となった今年の1樽あたりの平均価格は3,5974ユーロ(約522万円)で、前年より8%も高値で売られました。
2021年の大不作から一転、大豊作で当たり年の2022年
今年の秋の収穫は予想外に豊作で、オークションへの出品は802樽と2018年の843樽に次ぐ数となっています。
2022年の夏はフランス各地で過去最高気温を塗り替えるほどの猛暑でしたが、6月に例年以上の降雨があり、そのおかげでぶどうが干ばつにも耐え、豊作な上にクオリティーも高い当たり年になったと見られています。
昨年の2021年は春に雹が降ったことが致命的になり、1977年以来の不作に見舞われ、出品数は例年の半分の356樽でした。
ポストコロナで購買意欲増、海外の買い手も
今年のオークションの運営を担当したサザビーズ・ワイン(Sotheby’s Wine)社のアマイエス・アウリ(Amayès Aouli)氏は、今年の異常なまでのオークション価格高騰の理由について「40年ぶりの不作から一気に大豊作と、極端から極端へと傾いた」ことで、「買い手の購買意欲が上がった」と説明しています。
また、コロナ禍がひと段落したことで「遠く海外からの買い手が戻ってきた」ことも大きいと話しています。
中国人向けの買い付けを行うリン・ルガン(Lin Legun)氏は「中国人客はブルゴーニュワインに関心が高い」と述べ、さらに「アジア市場がレアな商品を買い始めると」価格高騰につながることを示唆しています。
高騰するブルゴーニュワイン
サザビーズフランス社のマリー=アンヌ・ジヌー(Marie-Anne Ginoux)氏は、昨年同社のオークションでワイン全体の売り上げ1億3200万ドル(約186億円/1ドル=約141円)の半分がブルゴーニュワインによるものだったと言います。
今回のオークションで最も高値がついた樽は、実行委員会樽(pièce des présidents)と呼ばれる特別なチャリティ樽ですが、値段は昨年より1万ユーロ(約145万円)も高い81万ユーロ(約1億1750万円)で落札されています。
1859年から続く、世界最古のチャリティーオークション
19世紀から続くチャリティーオークションを開催するボーヌのホスピスは、中世に施療院として設立され、貧しい人に治療を施してきました。
設立された15世紀当時から、近隣の貴族から寄進された畑で生産したブドウでワインを作り、その売り上げで病院を運営しています。
ホスピスの病院機能は20世紀半ばに別の場所に移され、建物はミュージアムとなっていますが、今でもボーヌにある4つの病院と6つの医療高齢者施設は国の支援を受けることなく、オークションの売り上げのみで設備の拡充や建物の改修を行っています。
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執筆:マダム・カトウ