7月21日(水)、フランス国民議会(l’Assemblée nationale)は「コロナパスポート(Pass sanitaire)」の導入に関する改正法案の審議を開始しました。
この法案は、飲食店や美術館などの公共の場での「コロナパスポート」の提示を義務付けるもので、ワクチン接種人口を増やす効果が見込まれる一方、摂取を義務付けることに対して反対意見が根強くあります。
コロナパスポート、提示の義務化の範囲拡大
コロナパスポートは、スマートフォンなどでQRコードを表示することにより、ワクチンの摂取証明として用いるものです。
フランスにおいてコロナパスポートに関する現行の法(2021年5月27日に可決)は、1000名以上が集まる場所のみでのパスポート提示を義務付けるものです。しかしマクロン大統領は7月12日、変異ウイルスの拡大や、ワクチン接種率の引き上げを目的として改正案を発表しました。
今回の改正案では、50名以上を収容する文化施設、レストラン・カフェ・バーなどの飲食店、また長距離路線の交通機関などへの入店・入場にパスポートを必要とする予定で、適応範囲を大幅に拡大することになります。なお公立学校は対象から外されています。
観光客への影響
ワクチン接種は基本的に義務ではないため、ワクチンを摂取していない人はPCR検査での陰性証明などによってウイルスに感染していないことを示す必要があります。これは観光客に対しても同じ措置になります。
改正案への反対意見
改正案が適用されると、コロナパスポートなしには大半の公共機関へのアクセスが不可能になってしまいます。これは、国民の自由を大幅に制限するものであるとして、市民や専門家から反対意見が出ています。
法学者のAnnabelle Penaは、パスポート導入による行動の制限は、憲法が保証する国民の自由に直接的にふれるものだという見解を示しています。
ロックダウンと同じ?
反対に、公衆衛生の観点からは、パスポートの義務化もロックダウンや商業施設の休業などと同じ措置だとする意見もあります。
現在はワクチンの在庫が十分に確保でき、希望すればワクチン摂取を受けることができる中では、ワクチン摂取を促進する施策として改正案も認められるとする考え方です。
こんなに続くのなら‥
しかしPanaによる民主主義の原則としては、国民の自由を制限できるのは、事態が重大で例外的な場合のみであり、自由が制限されるのは決まった期間のみだといいます。 今回のように、コロナウイルスによる生活への影響が長く続く場合には、自由を制限することは認められるのでしょうか。
また、現代社会においては、一般の利益と個人の自由のバランスの間にヒエラルキーがあってはならないといい、コロナパスポートのような規制が法的な拘束力をもつ場合には十分な議論が必要です。
早くも議会の審議に
以上のような反対意見が強いにも関わらず、マクロン政権は改正法案の可決を急いでいるようです。
7月19日には閣僚会議(Conseil des ministres)と国務院(Conseil d’Etat)で改正案が承認され、今後、国民議会と元老院での審議が行われます。
執筆あお
参照
Assemblée nationale Projet de loi nº 4386 relatif à la gestion de la crise sanitaire