7月6日(火)、昨年新型コロナウイルスの影響で中止となったカンヌ映画祭が、2年ぶりに本日より開催されます。例年5月中旬に開催されていたこの映画祭ですが、今年はロックダウンの影響から2ヶ月遅れでようやく開催にこぎつけ、今月17日まで行われます。
パンデミックで映画業界に激震、前例なき第74回
皮肉なことに、昨年中止になる前の年に開催された2019年のカンヌ映画祭でのオープニングに上映されたゾンビ映画では、北極に異変が起きてゾンビが目覚め、地球が破滅に向かっていくというシナリオでした。
ジム・ジャームッシュが手がけたユーモアたっぷりのこの映画とは裏腹に、2019年末から人類が直面した現実は、400万人もの人間を殺したウイルスにより世界中の人が社会から遮断され、文化に触れる機会を奪われ、経済活動が停止するという過酷なものでした。
「シネマは死んでいない」フレモー氏、2年ぶりで豪華なラインナップ
今年のカンヌ映画祭のアートディレクター、ティエリー・フレモー(Thierry Frémaux)氏は1ヶ月ほど前に、今回の映画祭が特別なものになると発表しています。
フレモー氏によると、今年のコンペティションに選出された24本の作品は、カンヌ「常連」の才能あるベテランや有望な若手などによるもので、昨年からスライドした作品も含め「大変充実した」ものになるようです。
オープニングはフランス人監督レオス・カラックス(Leos Carax)の新作「Annette」で、主役を務めたフランス人アカデミー賞女優マリオン・コティヤール(Marion Cotillard)と、スターウォーズに出演して一躍有名になったアメリカ人俳優アダム・ドライバーが紹介します。
そのほか、ポール・バーホーベンの「Benedetta」、ビル・マレー、ティルダ・スウィントンなどの豪華キャストによるウエス・アンダーソンの「The French Dispatch」などが選出されています。
特記すべきは、今年は24作品中にフランス映画が7本含まれていることです。
その中で実に3本の映画に出演しているフランスの人気女優レア・セドゥ(Léa Seydoux)、マチュー・アマルリック(Mathieu Amalric)、フランソワ・オゾン(François Ozon)監督の「Tout s’est bien passé」(「全てうまくいった」の意)に出演したソフィー・マルソー(Sophie Marceau)、マット・デーモンなどハリウッドの人気俳優が会場を賑わせることになっています。
今年のカンヌもNetflix不在、コロナ禍の影響は環境問題など作品にも
コロナ禍の影響で映画業界は壊滅的な打撃を受けました。
昨年から今年にかけて、世界各地で映画館は長期にわたり閉館を強いられ、そのため昨年公開されるはずだった多くの作品が今年の公開にずれ込んでいます。一方、ネットフリックス(Netflix)社に代表されるストリーミング業界がそのシェアを奪っています。
カンヌ映画祭主催者側は、今年もより一層映画館を支援する方針を崩していないため、映画館で公開されていないNetflix社の作品は一切コンペティションに参加していません。
コロナ禍はまた、作品の内容にも大きな影響を与えています。
世界中の人々が、人類がいかに儚い存在であるかを思い知らされ、地球温暖化や環境問題が深刻化していることから、今年はこういったテーマを取り上げている作品が多く見られます。
PCR検査場、コロナパスポート、会場内人数制限
開催中も新型コロナ対策には万全を尽くし、ワクチン接種者にはコロナパスポートの携行を義務付け、未接種者には48時間ごとにPCR検査を行います。上映会場では厳しい人数制限が実施されています。
今年も女性監督に狭き門?24本中わずか4本
今年も選出された作品のうち、女性監督の作品はわずか4本にすぎませんでした。
狭き門をくぐって選ばれたのは3人のフランス人監督の作品、カトリーヌ・コルシーニ(Catherine Corsini )の「The Divide」、ジュリア・デュクルノー(Julia Ducournau)の 「Titane」、 ミア・ハンセン=ラブ(Mia Hansen-Løve)の 「Bergman Island」 、ハンガリーのイルディコー・エニュディー(Ildiko Enyedi )の「L’Histoire de ma femme」のみでした。
主催者側は、今年も女性監督による作品が極端に少ないことに関して「女性監督を差別することなく、完全な透明性をもって平等に評価した」とコメントしています。更に「若手監督により注目」し、その中には「女性監督の方が多かった」と反論しています。
2021年のパルム・ドール(Palme d’Or)を受賞するのはどの作品でしょうか?
執筆:マダム・カトウ