３月６日（金）、新型コロナ感染拡大によるロックダウンで経済が大きく打撃を受けたにもかかわらず、2020年の海外からフランスへの直接投資案件は1215件に上り、前年比では僅か17％減と堅調に推移してます。
2019年、フランスがEU内海外投資人気ランキング第１位に
欧州における海外からの投資先国として、2017年に３位、2018年に２位と順位をあげてきたフランスは、2019年には１位の座を獲得しています。
海外からの投資動向を調査する政府系の団体ビジネス・フランス（Business France）の局長は、「この傾向がコロナ禍でどう変化していくかに注目している」と述べています。
幸い2020年は1215件の大型投資が行われています。確かにコロナ以前の2019年から17％減っていますが、国連の補助機関である国際連合貿易開発会議（Cnuced）の発表によると、昨年の世界における海外直接投資（IDE : Investissements directs étrangers）（注）は上半期でマイナス49％と半減しており、下半期もマイナス40％で推移していました。
海外の投資家による企業買収や生産設備への投資は雇用を生み出し、2020年フランスでは35000人がその恩恵に預かっています。これは過去10年間で２番目に良い数字であるとフランク・リーステール（Franck Riester）貿易担当政務次官は歓迎しています。
再生エネルギーへの投資が牽引
1215件のうち４分の１を生産工場が占め、研究開発が12％、企業向けサービス業13％の他、コロナ禍の恩恵を受けたEコマースの大幅な伸びで倉庫業も６％に上っています。
業種別では、投資の40％はコロナ禍で需要が高まるヘルスケア及びバイオテクノロジーですが、世界的な「脱炭素時代への転換」の流れで、注目されている再生可能エネルギーが同じく４割を占めています。
一方、コロナ禍で壊滅的な打撃を受けている航空や旅行関係への投資は激減しています。また、ソフト開発などのIT関係への投資も減っています。
米１位も欧州からの投資７割、コロナで結束？
投資元の国籍は、アメリカが１位で変わらず全体の17％を占めています。次にドイツがほぼ同じ16.5％と僅差で迫り、３位はイギリスの10％となっています。
フランスにおける海外投資の３分の２はヨーロッパ諸国からで、昨年特にオランダやアイルランドからの投資が伸びています。
欧州からの投資が堅調な理由として、ビジネス・フランスはEUが打ち出した7500億ユーロ（約97兆1200億円/１ユーロ＝約129円）の経済再生政策の効果が表れていること、またコロナ禍で物流が停滞し、マスクや医薬品を中国やアメリカなどへ依存せざるを得なくなったことから、欧州内での物資調達傾向が高まったことを上げています。
フランスという国で見ると、欧州の中心部に位置する地の利に加え、出生率が他国に比べ高いことから国内消費マーケットとしての価値が高く、インフラが整っており、質の良い労働力の確保が可能であることなどが挙げられます。
ブレグジットの恩恵がフランスにも
ブレグジットによりイギリスへの投資がヨーロッパ大陸に流れたことも影響しています。
対英投資の欧州への投資先変更で最も恩恵を受けたのはドイツ（49％）で、次にフランスが44％とこの２国でほぼ分け合った形になっています。
収束が見えないコロナ禍にもかかわらず、欧州投資への意欲はしばらく続くと予想されています。ビジネス・フランスが行った調査によると、海外投資を検討している企業のうち65％が欧州への投資は今後数年は続くと答えています。
地方への誘致が急務
フランスへの投資意欲が続く中、受け入れ側の課題は、海外から投資する企業に地方の無名な地域をいかにアピールするかということです。
パリ近郊や一部の有名な地方都市周辺だけでなく、工場建設にあたり安く土地が手に入り、しかも近郊の都市からの労働力が確保しやすい地方に海外投資を誘導することが急務となります。
（注）国外で事業活動を行うために企業を買収したり、生産設備などに投資したりすること。これに対し、国外の株式や債券など金融資産に投資することは海外間接投資と呼ばれます。（時事通信社情報より抜粋）
執筆：マダム・カトウ
