店内営業禁止で閉店中のパリマレ地区のレストラン
1月8日(金)、フランスのカステックス首相(Jean Castex)は7日(木)のテレビ演説で、昨年12月中旬から施行されている夜間外出禁止を1月末まで延長すると発表しました。また昨年各方面からの批判の対象となっていた検査体制の大幅な改善、現在独英などに遅れをとっているワクチン接種のスピード化を発表しました。
20時以降の夜間外出禁止、フランス全土で延長、感染急増の15県は18時から
政府が行った昨年12月上旬の発表で、10月末に導入されたロックダウン段階的解除の一環として導入された夜間外出禁止、レストランや映画館、博物館、劇場など文化施設の閉鎖、スキー場のリフトの使用禁止は、今月20日からの見直しが予定されていました。
しかしながら、これらの規制の緩和条件であった1日の感染者数の目標5,000人以下を達成できず、現在平均 15,000人で推移していることから、カステックス首相は会見で、現在施行中の規制は少なくとも1月31日まで延長されると発表しました。
首相はまた、現在の感染者数が高止まりしているのみならず、ここ数日で増加傾向にあること、またブルターニュ地方(Bretagne)とパリ近郊の介護施設でイギリス型コロナ変異種によるクラスターが発生していることから、警戒を強化する必要性があると訴えました。
レストランの店内飲食、バーの再開、依然見通し立たず
今月の発表で見直しが期待されていたレストランの店内飲食およびバーの営業は、再度見送りが確定し再開の目処は立っていません。これについて首相は「少なくとも2月中旬まで」と発言しましたが、度重なる「見送り」に明確な期日の発表には慎重な姿勢を見せています。
PCR検査、抗原検査体制《無料、迅速、手軽さ》で欧州一
首相はさらに、フランスの新型コロナ感染者の検査体制は当初の遅れを取り戻し、現在すでに昨年の公約だった一日70万人を大きく超え、昨年9月には100万人、クリスマス休暇前には300万人が検査を受けることができたと強調し、迅速に協力した医療関係者に謝意を述べました。
また、無症状者の任意検査で100ユーロ(12,700円/1ユーロ=約127円)前後の費用を被験者に請求する有料方式を採用する欧州他国と違い、フランスでは無症状でも「希望する人の検査は全て無料」といった点をアピールしました。
PCR検査はフランス全土の医療検査機関、開業医、薬局など約12,000箇所で気軽に受けることができ、結果は24時間で本人にメールで連絡されます。
症状のある人、濃厚接触者にオンラインでドクターストップ
今回の会見で新たに発表された対策として、自主隔離の強化による二次感染の回避が挙げられます。
今月10日より、症状がある人もしくは濃厚接触者は医師の診断を受けることなく、健康保険機構のサイトよりオンラインで会社などに提出するドクターストップ書面の申請が可能になります。
利用者には健康保険局の職員による電話での状況確認が週2〜3回ほど行われ、看護師の訪問も一度は行われます。
ワクチン接種手続きを簡素化、月末までに100万人接種
首相の発表によると、ワクチン接種開始当初に義務化されていた事前診察などを今後は任意とし、希望者には全て無料で提供されます。フランス政府はすでに2億回分のワクチンを注文しており、2021年の1年間で随時供給されます。この数は人口の倍以上になりますが、これについては昨年6月時点で「有望と言われるワクチン全て」を注文したためと説明しています。
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モデルナ社ワクチン、ライセンス契約で仏国内生産
EUで認可されたばかりの米独モデルナ社のワクチンは、フランス中部に位置するトゥール市近郊のモン(Mont)で一部生産されることが決まっています。
モデルナ社は、ワクチンの生産にあたって特許によるライセンス契約方式を採用しており、欧州内ではスウェーデンのレシファーム社(Recipharm)が200万ユーロを投じて作ったモンの工場で、欧州向けの他、アメリカで接種される1億回分の生産も行う予定になっています。ちなみに原材料はスイスのバイオテクノロジー企業ロンザ(Lonza)が供給し、レシファーム社は製品化、テスト、および販売を行います。
すでに世界各地で接種が進んでいるファイザー・ビオNテック社も、パリ南西90kmに位置するサン=レミ=シュール=アーヴル(Saint-Rémy-sur-Avre)に拠点を構え、今年4月から欧州向けを中心に生産が開始されます。
執筆:マダム・カトウ