5月15日(金)、フランスにおけるロックダウン段階的解除から4日経った昨日14日、パリ郊外、イル=ド=フランス地域圏に初のマスク工場が竣工しました。フランス政府は危機的な状況に陥る国内の観光業への大規模な支援を発表し、フランス国鉄は夏のバカンス予約のプロモーションを開始しました。今週開催予定だったカンヌ映画祭はキャンセルとなっています。
1日100万枚のマスクを生産、中国人実業家が1ヶ月で工場竣工
パリ郊外のブラン・メニル(Blanc Menil)にある巨大な倉庫に中国製の機械などを導入したマスク工場を建設することが4月中旬に発表されました。その後、1ヶ月という驚異的な速さで完成し、来週から1日に最高100万枚を生産します。生産されたマスクは、当面国が買い上げる予定になっています。
このプロジェクトの発起人は、フランスに40年在住する55歳の中国人実業家、シュー・シェン・ワン(Hsueh Sheng Wang)氏で、氏によると、工場建設にあたりイル=ド=フランス地域圏の支援を受け、また自らも400万ユーロ(約4,600万円/1ユーロ=約116円)を投じています。
イル=ド=フランス地域圏知事のヴァレリー ・ペクレス(Valérie Pécresse)氏は、自らが代表を務める右派(自由党 Libres !:旧共和党)の地元党員とともに出席した竣工式で、「イル=ド=フランス地域は、マスクが非常に不足していましたが、この工場が出来たお陰で地域の住民を守る事が出来ます」と、賛辞を述べました。
ワン氏、賞賛の陰に脱税の疑い
ワン氏は、欧州最大の対中国輸出入のプラットフォームがあるパリ郊外のオーヴェールヴィリエー市(Aubervilliers)で倉庫業を営み、中国系の貿易業者に巨大な倉庫を貸して財を成していますが、2014年から、脱税とマネーロンダリングの疑いで、国税の予備審査の対象になっています。
夏休みの旅行、自粛モードから一転、観光業支援に国内旅行奨励へ
外出禁止期間中フィリップ首相は「まだ夏のバカンスの予約をする時期ではない」と、慎重な姿勢をみせていましたが、昨日の記者会見で、合計180億ユーロ(約2,083億円)を投じるフランス国内の観光業支援策を発表しました。
また、国民に向け夏のバカンスの予約開始を促し、「国内旅行をすることがフランス全体を支援することになる」と、強力な後押しをしました。その中で、今後の感染状況次第では、地域限定で感染防止措置をとる可能性もある事を示唆しました。
フランス国鉄、6月2日まで全座席の50%のみ販売
この発表を受けフランス国鉄は、本日より夏のバカンスシーズンのプロモーションを開始しました。但し、政府の要請により、感染拡大抑止のための措置として、6月2日までは、座席の2席に1席、つまり総座席数の50%しか販売されません。
6月2日時点の感染状況により、販売数を上げるか否かが決定されます。
フランス国鉄は現在全体の65%しか運行していませんが、7月〜8月のバカンスシーズンには100%の運行を目指しています。
第73回カンヌ映画祭、中止するも2020年の選考作品50本は発表
本来なら、今月12日から23日まで行われるはずだった、毎年恒例のカンヌ映画祭ですが、今年は1968年の開催以来初めての中止となりました。
カンヌ映画祭運営委員会会長(Président du Festival de Cannes)のピエール・レスキュール(Pierre Lescure)氏は、「来年2021年には、また同じような事態が起こった場合も対応できるような準備」をし、今年の映画祭に関しては、「ノミネートされる映画、50本のセレクションは行い、5月末か6月頭には発表する」と述べました。
執筆:マダム・カトウ