4月21日(火)、昨日20日にフランスにおける新型コロナウイルスによる死者数が20,265人と 2万人を超えました。一方、病院への入院患者数及び集中治療室で治療を受ける重傷者は減少を続けています。そんな中、ロックダウン解除に関する政府の対応に関心が寄せられています。
入院患者3万人、重傷者5,600人、ロックダウン24日目から減少に
ロックダウンから35日が経過した4月20日時点でのフランスの感染者数は11万6,507人となりました。1日の死者は19日の547人とまだ高止まりしていますが、入院患者は26人減り、うち集中治療室の患者は61人減となりました。
ロックダウン23日目の4月8日時点では、集中治療室に7,148人の重症患者が入院していましたが、翌日から緩やかに減少に転じています。外出禁止の効果が、重症化する可能性の高い高齢者や疾病のある人の感染者減となって現れており、医療現場の緊迫した状況が僅かながら和らいでいます。
また、昨日の退院者は831人で、完治して退院した人の総数は37,409人となりました。
ロックダウン解除予定日までには集団免疫、ほど遠く
パスツール研究所(Institut Pasteur)は最近行った調査の中で、現在政府が予定している5月11日からのロックダウン解除までにフランスで約370万人、つまり《国民の5.6%が新型コロナウイルス に感染している》という予測を出しました。
この数字は、集団免疫を得るために必要な《国民の70%が免疫》からは程遠く、調査に従事した疫学者シモン・コーシュメズ(Simon Cauchemez)氏は「ロックダウン解除後の《第二の感染の波》が懸念される」と述べています。
同氏はまた、5月11日の解除もフィリップ首相が4月19日の記者会見で発表したように、「段階的に条件付きで行う以外に方法はない」と話しています。
ロックダウン解除に致命的なマスク・PCR検査不足 政府に批判の声
ロックダウンの段階的解除に向け、「マスクの着用を義務付けるのか?」と「国民全員にPCR検査を行うか?」に関して毎日議論が行われています。特に公共交通機関の利用に関して「マスク着用を義務付けるべき」といった声がパリ及び近郊や、リヨン(Lyon)などの大都市で上がっています。
フランスには新型コロナウイルス 流行当初からマスクの備蓄が少なく、PCR検査キットも全て輸入のため大幅に不足しています。
フランス政府は、3月14日にフランスがレベル3に達した時点で、「国民全員にテストするのは意味がない」と発表し、さらに感染拡大が深刻化し始めた3月22日時点でも、「マスクの着用は感染者のみ必要で、一般に着用は不要」と繰り返していました。
PCR検査も、重症患者や死者を多出している医療介護施設ですら、介護士および入居者全員に行われておらず、ようやく4月6日より優先的に検査を行っています。
外出禁止令が出た3月17日時点では、「解禁後は国民全員に検査をする」といった発言も出ていましたが、血液一滴で簡単にできる検査キットの信憑性が問題になったこともあってか、19日の記者会見では「症状のある人全員にPCR検査」に変わっていました。
一連の政府の対応に非難の声 自治体独自に対応
野党議員の中には「政府はマスクや検査の在庫に合わせて、国民への指示(マスクを着用したほうがいいかなど)を変える」と非難の声が上がっています。
フランス政府が2013年頃から予算削減のため14億枚あった政府のマスクの備蓄を追加せず、新型コロナウイルス 感染拡大時点で在庫は10分の1しかなかったことや、フランス国内にあった唯一のマスク工場も2018年に閉鎖し、現在多くの医療品を中国からの輸入に頼っていることなどの問題も浮上しています。
カンヌなど一部の地方自治体では独自にマスクを購入し、住民への配布が行われているところもあります。これに対し政府は「不平等」と批判していますが、政府の対応の遅れにしびれを切らした自治体独自の対策は増え続けています。
パリ市も「高齢者を優先してマスクを配布する」と発表しています。
執筆:マダム・カトウ