ノートルダム寺院火災から1年 修復難航 新型コロナで足踏み

2020.04.17

ノートルダム寺院火災から1年

4月17日(金)、2019年4月15日夕方パリのノートルダム寺院で出火し、寺院の屋根部分と尖塔が崩壊するなど大きな被害が出てから1年が経ちました。マクロン大統領は5年で再建すると宣言していましたが、度重なる問題に直面し工事は思うように進捗していません。

 

鉛汚染などで工事遅延、コロナウイルス でまた中断

昨年7月後半、作業現場の鉛の濃度が高いことから、作業員の安全のため工事の一時中断を余儀なくされました。また、秋から冬にかけての天候不良、特に強風により工事が度々中断されています。

そして、新型コロナウイルス 感染拡大による外出禁止令で3月17日より作業が中止されました。

1万本のパイプの撤去が必要

ノートルダム寺院は元々火災時に修復中だったことから、鉄パイプの足場が一部組まれていました。しかし、熱で溶けたり折れ曲がったままになって、この1万本のパイプの撤去がこの春に予定されていましたが、工事自体が中断してしまったため、見通しは立っていません。

フランスでは《リス》と呼ばれる最も高所で働く鳶職人が、古い足場の両側にある新しい足場からロープで降りて解体作業をすることになっていました。

ノートルダム寺院再建責任者のジャン=ルイ・ジョルジュラン(Jean-Louis Georgelin)氏は、「現在工事の再開を検討しているが、こういった感染の心配がない作業から徐々に始めることができる」と語っています。

 

復元作業は2021年開始、大統領の《2024年に完成》変更なし

昨年マクロン大統領が「5年で再建する」と発表すると、多くの専門家が「ノートルダム寺院のような歴史的建造物の再建は5年では無理」と異論を述べ、「いい加減な復元」になるなどと批判していました。

ジェルジュラン氏は「このような発言には悪意を感じる」と不快感を隠さずも、「我々の使命は完璧な復元を遅延することなく行うこと」で、5年後の2024年4月16日、テ・デウム(Te Deum : 賛美歌)を歌ってノートルダム寺院の再開を祝うだろう」と完成期日の遵守に意欲を見せました。

復元責任者の建築家、フィリップ・ヴィルヌーヴ(Philippe Villeneuve)氏は、「どういった修復工事をするかは、どのような復元完成図になるかによる」と述べています。氏によると、寺院のドームはまだ補強作業が必要で、さらに2つの礼拝堂は除染作業が必要になり、少なくとも秋までかかるようです。

 

新ノートルダム寺院の完成図は?

新しいノートルダム寺院のシンボルとも言える尖塔(flèche de Viollet-Le-Duc)は、焼失する前のゴシック調に忠実に復元されるのか?もしくは、マクロン大統領が望むように「現代の建築技術」を盛り込むのか?そうするとユネスコの世界遺産の認定はどうなる?など、復元完成図には様々な意見が飛び交っています。

中には、《尖塔はガラス製》や《屋根に有機農園》、《観光用のパノラマテラス》など突飛なアイディアもあります。

フランス国民はオリジナルに忠実な復元を希望

ヴィルヌーヴ氏は、19世紀に尖塔を修復したフランスの建築家、ユージェーヌ・ヴィオレ=ル=ドュック(Eugène Viollet-le-Duc)氏が残した設計図を元に《うまくリタッチ》したものを強く推しています。氏はまた、「結局はオリジナルに忠実な復元する方が納期を守れる可能性が高く、フランス国民の多くもそれを望んでいる」と述べています。

また、元々オーク材で作られた天井の梁の一部が、20世紀の工事で鉄骨とセメントで修復されていますが、これを機会にオリジナルの木の梁に戻そうという運動も起こっています。フランスの森には修復に可能なだけのオーク材が豊富にあり、また焼失まで8世紀間に渡りノートルダムの屋根を支えてきたことからも、木製の梁への愛着があるからです。

執筆:マダム・カトウ

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