フランス漁船がイギリス漁船を襲撃 地元メディアは「仏英ホタテ戦争」と報道

2018.09.04

フランス北部、ノルマンディ(Normandie)沖のイギリス海峡(仏:Manche、英:English Channel)で、ホタテ漁を巡って、フランスの漁船がイギリスの漁船を襲撃する事件が起こりました。現地メディアは「ホタテ戦争(La guerre de la coquille Saint-Jacques)勃発」と大々的に報じています。

 

事件の概要

8月27日(月)夜から28日(火)未明にかけて、セーヌ川(La Seine)の河口付近からおよそ22kmほど離れたノルマンディ地方の沖合で、フランスの漁船およそ40隻が、イギリスの漁船5隻に対して、罵声を浴びせたり、石を投げつけたり発煙筒をたくなどして、ホタテ漁を妨害しました。

それに対しイギリス漁船は、フランス漁船に船体を激しくぶつけて応戦。いくつかの漁船がこの衝突で破損し、3か所穴が開く被害が出ました。また、イギリス側の漁船の窓ガラスが割れる被害も出ました。船体が破損する激しい競り合いとなりましたが、両者ともけが人は出ませんでした。

 

事件の背景は

海域はフランス、しかしEUの共通漁業政策でイギリスも漁が出来る

事件が起きた海域は、セーヌ川の河口からおよそ22km沖合のホタテ漁が盛んな漁場で、フランスだけではなく、EU加盟国であるイギリスもEUの共通漁業政策によって、合法的に漁をすることができます。

フランスは期間限定、イギリスは年間を通じて漁が可能

フランスの法律では、ホタテの繁殖期に当たる夏の間は、資源保護の為にホタテ漁が禁止されていて、漁が出来るのは、10月1日から翌年の5月15日までと制限されています。それに対し、イギリスの法律では漁期に制限はなく、一年を通してホタテ漁をすることができます。

イギリス海峡に突き出た、ノルマンディのマンシュ(Manche)県の両側の海域では、ホタテを巡る論争は15年前から続いています。2012年以降、イギリス側に、大型漁船で乗り入れないことなど、一定の制限を設けることで協定を交わしていましたが、不満を募らせたフランス側が今年は協定を拒否していました。

ノルマンディ地域漁業組合(le comité régional des pêches de Normandie)のディミトリ・ロゴフ(Dimitri Rogoff)代表は、「この15年間、イギリスとアイルランドの漁船の数が劇的に増加している。」と述べ、現在ではおよそ70隻もの漁船が、フランスの海域でホタテ貝を含む貝類の漁を行っているとのことです。

フランス側の我慢が限界に

夏の間、ホタテ貝の繁殖のために漁が禁止されているフランスですが、その間にイギリスやアイルランドの漁船が、ホタテ漁を続けている現状に、不満を募らせていたフランス。そして、今年は協定を拒否していたにも関わらず、イギリス側が漁を続けたことに、フランス側の我慢が限界に達し、今回の事件へと繋がりました。

ロゴフ代表は「イギリスにとって、ここは無料のドリンクバーの様なものだ。いつでも好きなだけホタテ貝をとることができる」と批判しました。

また、「漁をやめてほしいとは思わないが、せめて(フランスの漁解禁日の)10月までは待ってほしい。ホタテ貝はノルマンディにとって需要で貴重な資源であり、もっとも繊細な問題だ」と述べました。

 

イギリスは「合法」を主張

スコットランド白身魚生産者協会(the Scottish White Fish Producers Association)のマイク・パーク(Mike Park)会長は、今回の件について「明確な海賊行為である」と批判しました。また、「イギリスはフランスの領海に入る資格があり、違法ではない」と、あくまでも合法的にホタテ漁を行っていることを強調しました。

イギリスの国立漁業団体連盟(National Federation of Fishermen’s Organisations)のバリー・ディーズ(Barrie Deas)会長も、「私たちは、イギリス政府に問題を提起し、合法的に漁を行っている漁師の保護を求めた」と述べました。

イギリスがEUを離脱した後、果たして利害調節はうまく行くのでしょうか。

執筆:Daisuke

 

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