29日(火)、ベルギーのワロン(wallonne)地域東部にあるベルギー第5の都市リエージュ( Liège)で、男が発砲し、警察官2名を含む3名が死亡しました。男はその後治安部隊によって射殺されました。
事件の概要
29日午前10時半ごろ、リエージュ市内の政府機関や飲食店などが集まっている大通りのカフェ付近で、男が市内をパトロールしていた警官をナイフで襲撃し、拳銃を奪い発砲しました。女性警官2名が死亡し、その後、近くの車に乗っていた男性に向かって発砲し、この男性も死亡しました。
男はその後、近くの高校に侵入し、職員の女性2名を人質に立てこもり、警察と銃撃戦の末、射殺されました。この銃撃戦で警官2名が負傷しました。人質の女性は無事でした。
犯人は服役中の囚人か
現時点では、警察は犯人の詳細は公表していませんが、現地の報道によると、犯人はベルギー人のベンジャマン・エルマン(Benjamin Herman)(36)とみられています。この事件の直前の月曜日から火曜日にかけて、リエージュから50㎞離れたマルシュ=アン=ファメンヌ(Marche-en-Famenne)で殺人があり、警察は同一犯によるものとみて捜査しています。
ベンジャマン・エルマンは17歳の時に暴行、傷害、麻薬密売など複数の罪で服役しており、2002年にもスーパーマーケットで兄と共に強盗事件をおこして服役していました。2020年までの刑期で刑務所に服役していましたが、再収監の準備の為2日間の予定で外出許可が出ていましたが、月曜日には戻らず、犯行に至ったとみられています。
また、犯人は服役中にイスラム過激思想に傾倒していったとみられています。
犠牲者は2名の女性警官と1名の若者
今回の事件で犠牲になったのは、45歳と53歳の女性警官と、車に乗っていて襲われた22歳の男性です。襲撃を受けた女性警官は背後から何度も刃物で刺されていたということです。警官を襲撃した後、犯人は徒歩で近くの車のところまで行き、車に乗っていた男性に向かって発砲、その後高校に立てこもりました。
警察はテロの可能性を視野に捜査を開始
治安当局は当初、犯人は当時「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んでいたとの情報から、イスラム過激派組織によるテロの可能性を視野に捜査を開始しました。しかし、クリスチャン・ボペール(Christian Beaupère)リエージュ警察署長は、その後の捜査で、実際に犯人がそのようなことを叫んでいた事実はなく、犯人の目的は警察を襲撃することだったとみられる、と発表しました。
警察による犯人の公式な発表はまだありませんが、本日中にも発表されるとのことです。
マクロン大統領も連帯を表明
事件を受けて、エマニュエル・マクロン(Emanuel Macron)大統領は火曜日、犠牲者とその家族、またすべてのベルギー人に対して哀悼の意を表明し、ベルギーと連帯していくことを明らかにしました。
ベルギーの首都ブリュッセル(Bruxelles)では、2016年の32人が犠牲となった同時テロ以降、テロなどに対する警戒レベルを上げていましたが、今年1月には警戒レベルを「テロの可能性は低い」とされる、下から2番目に引き下げたばかりでした。治安当局は、この事件後も警戒レベルは現在の状態を維持すると述べています。
欧州に渡航予定の方、滞在中の方は最新の情報を常に入手し、身の安全の確保に努めてください。
執筆:Daisuke