精肉店 過激ヴィ―ガンの襲撃を恐れて警察の保護を要求

2018.06.26

精肉店や豚肉販売店の店主たちが、過激な思想を持つ一部のヴィ―ガン(英:Vegan 仏:Végan 絶対的菜食主義者)たちの襲撃を恐れ、ジェラール・コロン(Gérard Collomb)内相に対して、警察による保護を要求しました。

 

ヴィ―ガンとは

1944年にイギリスで生まれた「酪農製品を食べない菜食主義」という意味でヴィーガニズム(英:veganism 仏:véganisme)という言葉が作られました。

当初は、酪農製品を食べない菜食主義、という生活スタイルでしたが、1951年にはヴィ―ガン協会は「ヴィーガニズム」の定義を拡大して、「人間はいかなる動物も搾取せずに生きていくべきだ、という主義」と定めました。

現在ではヴィーガニズムというと、動物製品を使わない「絶対菜食主義」という生活様式を表します。ヴィ―ガンとはヴィーガニズムを実践している人のことを言います。一切の動物由来製品を使用しない、という点が、積極的に菜食を行う一般的なベジタリアンとは違います。

ヴィーガニズムの中にもいくつかの派があり、次のように分類されます。

エシカル・ヴィーガニズム(英:Ethical veganisme)

動物の命を尊重し、動物の商品化を拒否、いかなる目的でも動物製品の使用を拒むスタイル。食事だけでなく、衣服では皮製品、毛皮、羊毛、絹、カシミヤ、羽毛など、装飾品では真珠、螺鈿など、化粧品ではローヤルゼリーや動物性コラーゲン、虫から採取されるコチニール色素など、あらゆる点において動物製品の使用を拒否しています。

また、実際には動物由来の物が使われていないものでも、動物実験を経て商品化されたものの使用も、拒否します。その中にはカメラのフィルムも含まれています。

ダイエタリー・ヴィーガニズム(英:Dietary veganisme)

一方、ダイエタリー・ヴィーガニズムは「純菜食主義」とも呼ばれ、食事における動物製品の排除だけを目的としています。

エンヴァイロメンタル・ヴィーガニズム(英:Environmental veganism)

エンヴァイロメンタル・ヴィーガニズムは、エンヴァイロメンタル・ベジタリアニズム(Environmental vegetarianism)とも呼ばれ、その名の通り、畜産業が環境に破壊的なダメージを与えると考え、畜産業は持続不可能な開発であるとして、直物由来の製品の使用や菜食主義を行うことを言います。

動物製品が環境に与えるダメージとしては、化石燃料・水などの資源の大規模な消費、森林破壊、動物の生命活動及び動物の飼育による温室効果ガスの排出などがあげられます。

 

過激化するヴィ―ガン

文化的背景や宗教的理由を除き、ヴィ―ガンなどの生活様式というのは、本来は個人が自由に選択できるものですが、中にはその信条が暴走し、過激化する人もいます。

4月には、フランス北部のオー=ド=フランス(Hauts-de-France)地域圏で、7軒の肉屋や魚屋が、過激化したヴィ―ガンによってウィンドウの破壊、壁への「stop au spécisme!(種差別をやめろ!)」という落書き、偽物の血をかけられるなどの被害にあいました。

また、過激思想を持つヴィ―ガンの中には、他人の生活様式を糾弾する人もいて、ヴィ―ガンとそうでない人の間に大きな軋轢を生んでいます。

 

一部のヴィ―ガンによる心無い発言も

また、今年3月にフランス南部のトレブ(Trèbes)で、3名が死亡したテロ事件に関して、ヴィ―ガンの活動家である女性が、フェイスブック上で被害者に対して心無い発言をし、禁固7カ月の刑を受けています。

このテロ事件は、イスラム国(IS)に忠誠を誓う男が、地元のスーパーマーケットを襲撃し、警察官一人を含む3名が犠牲となりました。

ben quoi, ça vous choque un assassin qui se fait tuer par un terrorist ? pas moi, j’ai zéro compassion pour lui, il y a quand même une justice !(原文ママ)

「一人の暗殺者がテロリストに殺されたのがショックなの?私は違う、私は彼に対する同情はゼロよ、やっぱり正義はある!」

女性はフェイスブックに、現場となったスーパーマーケットの精肉店売り場で働いていてテロリストの犠牲となった、クリスティアン・メドヴェス(Christian MEDVES)さんの写真と共に、このような文章を投稿し、大きな批判を受けました。

フランス酪農業界同盟(CFBCT Confédération Française de la Boucherie, Boucherie-Charcuterie, Traiteurs)はすぐさま、この投稿に対して非難する声明をツイートし、被害届が提出されたことを明らかにしました(3月当時)。

 

過激化するヴィ―ガンを恐れ警察の保護を要求

こうした経緯を受け、6月22日(金)、ジャン=フランソワ・ギヤー(Jean-François Guihard)CFBCT会長は、コロン内相に対して、過激化するヴィ―ガン達からの襲撃から精肉店を守るため、警察の保護を要求する書簡を提出しました。書簡には、「出来るだけ早く、物理的・言葉・モラルによる暴力行為をやめさせるよう、政府に保護を要求する」と記されています。

フランスには18,000の精肉業者があり、ヴィ―ガンのライフスタイルや、過度なメディア報道による影響を危惧しています。

一部のヴィ―ガンのこうした行き過ぎた行動から、ヴィ―ガン全体に対するイメージの悪化を懸念する声も、ヴィ―ガンの人達から出てきています。

執筆:Daisuke

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