4日(月)、パリの10区と18区に残る、2つの大きな移民キャンプの撤去作業が当局によって行われ、973名の移民が保護されました。
10区と18区にある大きな移民キャンプ
今回撤去がおこなわれたのは、10区のサン=マルタン運河(canal Saint-Martin)沿いと、18区のポルト・デ・ポワッソニエ(Porte des Poissonniers)にある、大きな難民キャンプです。
サン=マルタン運河は、地下鉄のジョレス(Jaurès)駅付近からバスティーユを通ってセーヌ川に流れる、映画の舞台にもなっている運河ですが、ジョレス駅付近から数百メートルにわたり移民がキャンプをはっていて、景観や治安の悪化はもとより、不衛生な環境で多くの移民が生活を送っていることが以前より指摘されていました。
また、18区のポルト・デ・ポワッソニエ付近は高速道路沿いに、移民が大規模なキャンプを作りスラムのようになっていたことが懸念されていました。
973名を保護
今回の移民キャンプ撤去で、973名が保護されました。そのうちの58名は、保護者のいない未成年者、家族、身寄りのない女性、夫婦など、社会的に弱い立場の人達でした。
撤去作業は約300名の警察官、憲兵隊によって4日(月)の朝6時半頃に始められ、大きな混乱もなく作業が続けられました。これまでの調査で、サン=マルタン運河には約550名、ポルト・デ・ポワッソニエには約450名の合計約1,000人の移民がいると確認されていました。
保護された移民たちは約15台のバスで、収容先となる、パリ、およびイル=ド=フランス(Île-de-France)地域圏に用意された15~16ヶ所の体育館へ移されました。
À Paris, les derniers campements de migrants évacués pic.twitter.com/upwseDwhiU
— BFMTV (@BFMTV) 2018年6月4日
今回の撤去作業は、3年前から行われてきた撤去作業の36回目で、先週には19区のヴィレット貯水池(Bassin de la villette)にあったパリ最大のミレネール(Millénaire)とよばれる移民キャンプが撤去されたばかりです。今回の撤去により、パリに残っていた大きな移民キャンプは全て姿を消すことになります。
政府とパリ市の間で揺れる移民
移民キャンプでは不安と緊張が高まり、暴力行為により重傷者が発生する事件や、移民の一人がサン=マルタン運河で溺死するという悲劇も起こっていたため、パリ市民からも移民キャンプに対して不安の声が噴出していました。
これまでにも、アンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)パリ市長とフランス政府の間では、数週間にわたって移民問題に対する対立が続いています。政治的責任を逃れるために移民キャンプ撤去の容認をしないとして、政府はパリ市を非難しています。一方パリ市議会は、難民受け入れを拒否する姿勢の政府に対し、法的義務を尊重するように呼び掛けています。
これは、ジェラール・コロン(Gérard Collomb)国務大臣が提出した、新たな「亡命・移民」に関する法案が国民議会の賛成多数で採択されたことに由来します。(2018年4月22日記事 新しい亡命・移民に関する法案賛成多数で可決)
子供を救った英雄への優遇は適正だったか
不法移民への取り締まりが一層強化される一方、先日バルコニーから転落しそうな子供を救った、不法移民であるマムドゥ・ガッサマ(Mamoudou Gassama)氏に対して、エマニュエル・マクロン(Emanuel Macron)大統領が、フランス国籍取得を提案しました。これには、右派団体や、更には難民支援団体などからも、「行き過ぎた対応だ」との声が上がっています。
不法移民への締め付け強化に対する批判を、ガッサマ氏へのフランス国籍授与を隠れ蓑にしてかわす狙いがあるのでは、とも言われています。
奇しくも、移民キャンプが撤去された昨日あさ、ガッサマ氏はパリ市議会に招かれ、イダルゴ市長から「グラン・ヴェルメイユ(Grand Vermeil)」と呼ばれる、パリにとって素晴らしい行いをした人に与えられるメダルが授与されました。
執筆:Daisuke