落下寸前の子供を救った英雄 滞在許可証が交付され消防士になる

2018.05.29

26日(土)に、パリ18区の集合住宅の5階のバルコニーから男の子が落下しそうになっているところを、バルコニーを伝って5階までよじ登って助けた、マリ移民のマムドゥ・ガッサマ(Mamoudou Gassama)氏に、本日滞在許可証が交付されることになりました。

 

救出劇の概要

土曜日の夜8時頃、パリ18区にある集合住宅の5階のバルコニーの外側に4歳の男の子がぶら下がっているのが発見されました。当時男の子の親は留守にしていて、発見した隣人がバルコニーの敷居越しに手を伸ばして、落下しないように子供の手を支えていましたが、落下するのは時間の問題に思われました。

その時、地上にいたガッサマ氏が自らの危険を顧みず、バルコニーの外壁を伝って素手で5階までよじ登っていき、バルコニーにまたがった状態で男の子を引き上げて救出しました。

  救出時の様子を撮影した動画はSNS上に投稿され、多くの人が彼に称賛の言葉を口にしました。消防隊が現場に駆け付けた時には既にガッサマ氏によって救出されていました。

救出したヒーローはマリ移民

自らの危険を顧みずに男の子を救出したのは、数か月間に渡仏してきたばかりのマリからの移民であるマムドゥ・ガッサマ氏(22)。 彼がメディアに語ったところによると、子供を助ける時はまったく怖くなかった、5階まで登っていくことはできると信じていた、とのこと。ただし、子供を助けリビングルームに入った途端に恐怖で腰が抜けて座り込んでしまったそうです。

当時、ガッサマ氏と同じようにバルコニーをよじ登って助けようとしていた人が複数人確認でき、多くの人が見守る中での救出劇でした。

ガッサマ氏は、パリ郊外のモントルイユ(Montreui)市から名誉市民権を送られ、更にパリで消防士として働くことが決定しました。また、エマニュエル・マクロン(Emanuel Macron)大統領は、ガッサマ氏を大統領府(Palais de l’Élysée)に招待して彼の勇敢な行動を称え、滞在許可証の交付を約束しました。 29日(火)、ガッサマ氏は17区の消防署で消防隊としての第一歩を踏み出しました。(5/30追記)

パリのイダルゴ市長も称賛のツイート

パリ市のアンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)市長も、彼の勇敢な行為に対して称賛のツイートをしました。ツイートの中によるとイダルゴ市長は、ガッサマ氏と電話で直接話をし、彼がフランスで滞在できるよう出来る限りサポートする意向を伝えました。

「昨夜、子供の命を救ったマムドゥ・ガッサマ氏の勇敢な行動に対して盛大な喝采を送ります。今日彼と電話で話をすることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。」   また、マクロン大統領がガッサマ氏に滞在許可証の交付を約束したことを受けて、以下のように喜びの気持ちをツイートしました。

「大統領が、子供の命を救ったこのヒーロー、マムドゥ・ガッサマ氏に対して特別な計らいで素晴らしい決断をしたことを嬉しく思います。私はここに、フランスの融和と受け入れにおける前向きな兆候を見ることできます。」

 

 フランスでは難民申請が厳格化されたばかり

フランスは、先の国会で不法移民をより厳しく取り締まる法案を可決していて、大きな議論を呼んでいました。難民申請がより厳格化され、不法移民に対する締め付けが今日かされた矢先に起きた、今回の救出劇。
新しい亡命・移民に関する法案賛成多数で可決(2018/4/22の記事)

この英雄に対するマクロン大統領の特別な計らいには、国民からも大きな賛同を得ています。


ガッサマ氏のインタビューの様子(BFM.TV)

ガッサマ氏は今日にも滞在許可証を交付される予定です。一方、事件当時に家を留守にしていた両親は、子供を監督せずに放置したとして父親が警察に拘束されているとのことです。

今回の救出劇は、単に一人の若者が子供の命を救った、というだけでなく、彼が滞在許可証を持たない移民であったことや自分の身の危険を顧みずに子供を助けたことなど、多くの面でフランス国民にとって大きく心を揺さぶる出来事となりました。

執筆:Daisuke

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