フランスの出版業界は日本と同じくたくさんの雑誌、書籍、コミック、漫画など取り扱っていて、日本の漫画の売れ行きも好調のようです。
今回は残念ながら日本の書籍ではありませんが、フランスの出版業界に驚くべき現象を起こした本を紹介します。どんな本がベストセラー?ヒットが生まれた背景は?フランス人の心をつかんだ作品は一体どのようなものなのでしょうか?
1千万部の売り上げを記録の大ヒット作とは?
本屋に行っても在庫切れ、何件か本屋をはしごしてようやく入手。そんな現象が起きるほど多くの人に読まれた作品は、フランスの漫画(フランスではボンデシネと呼ばれる、以下BDと略)の
モーテル アデル ” MORTELLE ADÉLE “
という漫画シリーズです。読者の年齢層は7歳~10歳の子どもたち。出版業界においてBDでこれだけの売り上げを記録するのは前代未聞と言われ、今では関連グッズに、歌に、と広がりを見せています。
2012年からシリーズ化されて、定期的に出版されているこのアデルシリーズ。主人公の簡単な説明をしましょう。
アデルのプロフィール
名前: アデル
年齢: 中学生
容姿: 赤毛、そばかす、鋭い目
家族構成: 父と母との3人暮らし、猫1匹
性格: シニカルで皮肉屋、いたずらっ子
特徴: 想像の中の友達と会話している、飼い猫をぞんざいに扱うことが多い
漫画の物語はアデルの日常、主に学校と家庭の出来事をテーマに進められていきます。半ページで完結する短いストーリーとなっています。
本のタイトルMortelle Adéleとは?
フランス語の日常会話で C’est mortel ! (セ モルテル)という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
死を意味するmort を語源にもつmortel(le).
une maladie mortelle 死に至る病気
un danger mortel 死にいたる危険
という使い方をよくされます。
また日常会話で
Ouah! c’est mortel ! (セ モルテル)
うわっ!これやばいでしょう!
うわっ!これ凄すぎでしょう!
この場合、すごいの部分を強調するために使われています。
少しニュアンスは伝わったでしょうか?
本のタイトル ” MORTELLE ADÉLE ” (モーテル アデル)は強烈なアデルというニュアンスでつけられています。
そうです、アデルは優しくて可愛らしいというわかりやすい主人公ではなく、時に残酷で、手に負えないくらいの強烈なキャラクターなのです。
アデルは子供たちの願望の象徴?
作者のAntoine Doleさんは、テレビのインタビューで自分の中学校時代の経験を元にこのキャラクターは生まれたと語っています。作者自身、学校にうまくなじめず同級生にからかわれても言い返せずという悶々とした時期を過ごしたそう。傷ついた心から生まれたのは自分とは正反対の人物でした。
友達に何か言われたら言い返すだけでなく仕返しも厭わない、親にも反抗的な態度で、いつも何かに怒りを感じているのがアデル。
お話の中でも、おしゃれな女子2人組とのバトルが定期的にあり、何を言われてもまったくめげず、逆に闘争心を沸々とさせてアデルが立ち向かうシーンが描かれています。
多くのフランスの子供たちがこのキャラクターに、何か希望を見出したのでしょう。家庭で、そして学校でいい子として振る舞うことを望まれる事が多いフランスの子どもたちにとって自由奔放なアデルは憧れのキャラクターなのかもしれません。
多くの読者に愛されるロングセラー作品となりました。
まとめ
いかがでしょうか?最近のインタビューで作者は仕事の関係で日本に何度も行くうちにとても好きになったと語っており、日本との縁を感じているそうです。現在、作者は可愛いパンダのキャラクターGadouが日本を紹介する本などを出版しています。
近い未来、アデルのBDやパンダのGadouと日本でお目にかかれるかもしれませんね。アデルに興味があるかたは是非サイトを覗いてみてください。
https://mortelleadele.com/
執筆 YUKO