フランス語やフランス観光が好きな方なら、フランス社会やフランス人の考え方について興味をお持ちなのではないでしょうか。ネットで検索すれば観光情報などは簡単に手に入りますが、フランス人社会について多くを知るには限りがあります。今回は、フランス社会について理解するためにとっておきの本 “ MAX ET LILI “ (マックスとリリ)を紹介します。
“MAX ET LILI” ってどんな本?
“MAX ET LILI” はフランスで人気の子供向けの本です。2022年5月現在、シリーズ129冊目が発行されています。サイズは、縦25☓横16センチのコンパクトな作りです。価格は、6ユーロ弱。
書店の児童書コーナー及び大型スーパーなどでも必ず売っているほど、フランス人に親しまれているようです。作者は Dominique de Saint Marsさん、イラストは Serge Blochさんが手掛けているミニサイズのBD(漫画)になります。
ストーリーと作者の思い
お姉さんのリリと弟マックスを中心にした展開になっており、そこから家族や友達などを含めたさまざまな人たちがお話に登場します。
児童向け雑誌の編集者だった作者が、10万人以上の子どもたちにインタビューをして作られた本です。子どもたちが自分の考えと感情を表現するきっかけになってほしいという願いが込められているそうです。
大人も惹きつけられる多彩なテーマに注目!
私がこの本を面白いなと思ったのは、テーマの引き出しがとても多くフランス社会を漫画でわかりやすく表現されていることです。いくつかテーマの例を挙げてみたいと思います。
“Lili ne veut plus se montrer toute nue”
裸を見せたくないリリ
“Max va à l’hôpital”
マックス病院へ行く
“Simon a deux maisons”
2つお家があるシモン
上に挙げた本は外見のコンプレックス、病院に行くほどのケガの体験、両親の離婚によって2つの家を行き来する子どもの気持ちをテーマにしています。
その他にも人種や心の問題、死についてなど。さらにパーティーに行く、クリスマスを楽しむなど明るいテーマもあり、フランス人の日常生活を知ることできるのでおすすめです。
作者もインタビューで語っていますが「この本を通して恐れや悲しみなど、普段子どもたちが話しにくい内容も積極的に取り上げ、親子で話し合うきっかけになれば…」という願いがあるそうです。
この本がフランスで愛される理由
この本には実はもう一つ特徴があります。お話の後に質問のページが設けられ、読み手がより深くテーマについて考えることができる点です。
例えば、”裸を見せたくないリリ”では、羞恥心をキーワードに以下のような質問が書かれています。
自分も裸を見せるのに抵抗があるかないか?
恥ずかしさとは何か?
自分の容姿を完璧じゃなくても受け入れることができているか?
ほっそりとした女性を広告に使うことについてどう思うか?…など。
最後に、このテーマについて家族や友達と話してみましょうと書いてあります。8歳から14歳までが対象に作られた本ですが、大人の私が読んでも興味深いです。
お話を読んで終わりではなく、自分の意見を持ち発信するところまで導くのがフランスらしいと感じます。なぜならフランスでは、自分の考えを発言することをとても前向きに捉えているからです。
“MAX ET LILI” の世界を動画でどうぞ!
今回紹介した「マックスとリリ」は、日本語翻訳の書籍がありません。主人公のマックスとリリ以外の登場人物の描写も優れており、読んでいると思わず「うんうん、こういう人いる!」と共感することが多いです。
動画でマックスとリリの本をフランス語で読み聞かせをしているものがあるので、興味のある方はぜひご覧ください。また、フランス語ですが作者のインタビュー動画もありますので、そちらもぜひ見てくださいね。
Youtubeでマックスとリリの本の読み聞かせをしている動画
https://youtu.be/oeU9vBPE85Y
作者 Dominiqueさんのインタビュー
まとめ
フランスに住んでいると、自分の意見や感情表現の大切さを感じます。今回紹介した本は、身近なテーマと読みやすい漫画という手法を使って、子どものときから自分で考えて表現することを学べる内容になっています。機会があればぜひこの本の世界をのぞいてみてくださいね。
執筆 YUKO