2023年6月23日(金)、クイヤール環境政務次官(Bérangère Couillard)は22日、今後2年間でガラス瓶の回収および再利用のシステムを稼働させると発表しました。フランスでも80年代にペットボトルが普及する以前、飲料の瓶を回収し、再度瓶詰めにして販売する仕組みがありました。瓶はリサイクルが可能ですが、高熱で溶かすためエネルギー消費量が高いことから、昔のようにメーカーが回収し再利用することが注目されています。
再利用、まずは瓶から、プラスチックの生産量減へ
フランス政府は2040年に脱使い捨てプラスチックの目標を立てています。そのためにはリサイクルも重要ですが、そもそも多すぎるプラスチックの使用料自体を下げる、つまり「生産量自体を下げること」が最も重要だと環境相は説明しています。
その一環として。様々な種類があり、劣化などが問題になるプラスチック容器よりも再利用に適しているジュースやビール瓶、および瓶詰め食品用など様々な瓶を回収し再利用する仕組みを再構築することが急務となっています。
現在、瓶の回収再利用に関して、特に法的な観点から議論が行われておりそこがクリアになれば、来年からスタートするテスト運用を経て、2年後の25年にはスーパーなどが店の規模に合わせ、瓶の回収スペース設置の義務化を目指しています。
瓶の回収スペース設置にカルフールが意欲
来年のテスト運用は、大手スーパーチェーンの中から希望を募りますが、すでにカルフール(Carrefour)が強い関心を示しています。
使用済みの瓶は回収するだけでなく、洗浄しなくてはなりません。
そのためにはフランス全国のあちこちに洗浄工場が必要になりますが、すでに西フランスのレンヌ市(Rennes)にはいくつかの工場があります。
ビンの形に「定型」を導入、再利用を簡単に
今年5月、クイヤール政務次官と使い捨てパッケージや紙のリサイクル運用を推進する政府公認機関シテオ(Citeo)社は、フランス大手の瓶製造会社Verallia O-I社などの協力の元、飲料や瓶詰め食品用の瓶の「定型」を作り、食品メーカーにその利用を促進すると発表しました。
パッケージの再利用、現状はほぼ「ゼロ」
政務次官はまた、食品メーカーにこの定型瓶への移行を促すため、総額5,000万ユーロ(約78億円/1ユーロ=約154円)の奨励金を用意していることも明らかにしています。
フランスでは家庭で利用されるパッケージの再利用は進んでおらず、使い捨てパッケージの総量の1%にもおよびません。
そのため政府は2027年にこの割合を10%にまで上げることを目標に掲げています。
フランスのリサイクルや再利用、欧州他国に「大幅遅れ」
瓶の回収再利用は、フランスが遅れをとっている家庭ゴミの分別やリサイクルの改善策の一つでしかありません。
フランスは今月頭、欧州委員会よりこの点に関して指摘を受けたばかりです。
低い回収率とリサイクル率、消費は増加
フランスのプラスチック家庭ゴミの回収、およびリサイクルはわずか23%にすぎず、ペットボトルの回収率も2021年から22年にかけ60%で止まっています。
一方、消費量の方は2022年は前年比4%も増えています。
2040年に使い捨てプラスチック「ゼロ」という目標を達成するには、2025年から50%の削減が必要になりますが、このペースでは2029年になってもそれすら達成できないと政務次官は懸念しています。
削減できないから、リサイクル不可能なプラスチック容器の使用禁止も
そのため、2025年までにリサイクル不可能なプラスチック容器、お寿司などによく使う黒い容器や発泡スチロールなどの使用を禁止することも検討されています。
ペットボトル回収再利用に「足踏み」の意外なワケ
瓶の回収再利用の準備が先行する中、リサイクルに適したペットボトルの回収再利用の開始発表は9月末に持ち越されています。
クイヤール政務次官はこれに関し、関係各者への「調整」に時間がかかっていると弁明しています。
ペットボトルの回収がスーパーなどの出口で可能になると、そもそもこれらを回収し分別する設備に今まで膨大な投資を行ってきた自治体の回収量が激減します。自治体は設備の運転費用の一部を回収したペットボトル等をリサイクル業社に販売することで補ってきました。
つまり時間稼ぎの最大の理由は、こういった自治体のゴミ分別場の資金源を考え直す必要性が出てきたことです。
フランスの公共ゴミ箱も分別へ、家庭ゴミ「優等生」にボーナス
ペットボトルや空き缶の回収率の悪さの一因として、道端に置かれた公共のゴミ箱に分別がないことが指摘されています。確かによく見ると、リサイクル可能な瓶や缶、ペットボトルなどすべて同じゴミ箱に入っています。
分別は企業内、オフィスビルでも徹底されていないため今後強化される点として挙げられています。
さらに家庭での分別を向上させるため、ゴミ回収費用に差をつける、優等生は安くするといった方策も検討されています。これはすでに一部の地方自治体では進められており、約700万人の国民がこの変動制料金の対象になっています。
執筆:マダム・カトウ