仏マクロン大統領インタビュー、ウクライナ武器支援、ガソリン不足、景気後退

2022.10.14

フランス 政治

10月14日(金)、マクロン大統領は12日に出演したテレビ番組で、ウクライナへの武器供給、エネルギー問題、製油所のストによるガソリン不足、景気後退など、現在フランスが直面している問題についてインタビューに答えました。

 

マクロン大統領、仏製自走砲「カエサル」ウクライナへ追加供給を表明

フランス国営テレビ「フランス2」に出演したマクロン大統領はインタビューの冒頭で、ウクライナへの支援として「カエサル」(CAESAR:CAmion Équipé d’un Système d’ARtillerie:砲兵システム搭載トラック)と呼ばれる155mm自走榴弾砲をすでに18台供給していると述べました。

これはフランス陸軍が所有する自走砲76台の4分の1に相当しますが、大統領は今後さらに追加する意向を表明しています。

仏軍からの供給は限界、デンマーク軍の注文分から6台をウクライナへ?

フランスは本当にカエサルをウクライナに追加で送ることができるのか?

これについて、地政学および軍事戦略専門家のオリヴィエ・ケンプ大将(Général Olivier Kempf)は、フランスはすでに「自軍の身を削って」自走砲をウクライナに送っているため、「もうこれ以上陸軍所有分から提供することはできない」と述べています。

そのため、マクロン大統領が表明する「追加分」に関しては、すでにデンマーク軍への納品が決まっている12台のうち6台がウクライナへの支援にあてられるのではないかと見られています。

 

ロシアへのガス依存、減らさなくてはならない

マクロン大統領によると、ウクライナ侵攻前、欧州全体のガスの約40%はロシアから購入されていましたが、現在その割合は7.5%に激減しています。

確かに2021年、EUは天然ガスの45%をロシアからの輸入に頼っていましたが、今月の第1週には約7%(EUおよび英国)にまで下がっています。

もともと依存度が低かったフランスは、2020年の時点で17%程度をロシアから輸入していましたが、9月のアニエス・パニエ=リュナシェール(Agnès Pannier-Runacher)環境相の発表では9%にまで下がっています。

ちなみに2020年のフランスの天然ガス輸入元の内訳は、ノルウェー36%、ロシア17%、アルジェリア8%、オランダ8%、カタール2%となっています。

 

マクロン大統領、EU電力市場【改革推進】のワケ

欧州の電力市場改革推進派のマクロン大統領は、「改革により複数の料金体系を作ることができ、特に原子力発電が多く、発電に関してガスへの依存度が低いフランスには大きなメリットがある」と発言しました。

現在、EUにおける電気料金は、需要に応えるために供給側が最後に利用した発電方法(ほとんどの場合がガス発電)を元に全ての電力供給会社に対し一律で決められています。

フランスの消費者、割高な電気料金を払わされている?

つまり、原子力や水力など「比較的コストの低い方法」で発電した部分が8割あったとしても、需要に追いつくために残りの2割をガスで発電すると、全ての料金がガス発電コストを元に計算される仕組みになっています。

フランスでは原子力発電所の一部閉鎖やメンテナンスを理由に、原子力での発電量が減っているため、ガス発電の利用が増えています。

つまり消費者は、割高な電気代を払っているわけです。

改革へ、長い道のり

この仕組みはフランス以外のEU加盟国でも批判されており、今月20日からのEUサミットの議題にも上がっています。しかしながら、ガス依存が高いドイツを筆頭に各国の事情が異なる中、改革への道のりは長いと予想されています。

 

フランスは景気後退へ突入か?「数字を見よ」と大統領

「数字をご覧なさい。欧州他国に比べ、フランス経済はウクライナ侵攻で悪化した不景気に持ちこたえている」と大統領は力強く答えています。ヨーロッパ最大の経済規模をもつドイツの2023年の経済成長率は、わずか0.4%と予想されています。

さらにIMFが発表した予測によると、来年ドイツは景気後退(-0.3%)に入ると見られています。フランスに関しては、来年の経済成長率はドイツを上回り0.4%と予想されています。

とはいえフランス銀行(Banque de France)は、今年の冬から来年の前半にかけて、数ヶ月の一時的な景気後退リスクがあると発表しています。

ストによるガソリン不足「徐々に改善」発言も、来週「ゼネストリスク」

マクロン大統領はガソリン不足について、「来週から徐々に改善し1週間ほどで正常化する」と発言しています。これは政府が公共交通機関や一部の業種に対し、最低限のサービスを保証させるため、ストライキ中の従業員の一部を強制的に職務に就かせる法律を施行したからですが、組合側からはストの終了に関する発表は今のところ行われていません。

組合側、強硬姿勢崩さず

これに対し、フランス最大の労働組合CGTは、政府が行った製油所ストへの法施行に反対し、来週からはさらに「昇給のためのスト」と称し主に交通系などに呼びかけて業種を超えたゼネストを行うと発表しています。

執筆:マダム・カトウ

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