フランス 国を挙げて「節電キャンペーン」

2022.09.30

フランス 国を挙げての節電キャンペーン9月30日(金)、最低気温がパリで10℃を下回るなど秋が深まるフランスで、政府は今年の冬のブラックアウトを避けるため、国民に向け10月10日から一大節電キャンペーンを開始します。スローガンは「一人一人の小さな努力が大事」。コロナ禍でも各自の努力を強いられたわけですが、今年の冬は電力の節約でまた努力の冬になりそうです。

 

塵も積もれば…「個人の努力」促すキャンペーン、国全体で大きな省エネ

「一人一人の小さな節電が大事」、皆でやれば国全体でこんなにも節電になります。

そんなふれ込みの仏政府のキャンペーンが10月から全国で展開されます。このキャンペーンでは、今年の冬の電力不足に備え、国民の節電への協力のお願いとして具体的な節電行為の推奨を行っています。

キャンペーンに協力する非営利団体「ネガワット」(négaWatt)は27日、住居、交通、企業の3分野にわたり、直ちに実行可能な50の節電行為と省エネ効果のリストを発表しました。

ガス20%削減、原子炉12基分の省エネ

ネガワットの原子力、持続可能なエネルギー移行担当のイヴ・マリニャック(Yves Marignac)氏によると、この省エネ行為だけでも短期間に国全体の約13%のエネルギー(電気、ガス、ガソリンや灯油)が節約できます。

特に貢献するのはガスの20%減です。次に電気も17%減で、これは原子炉12基分の発電量に相当します。

同氏いわく、この節電行為を続けると中期的つまり2年後には、本来掲げられていたヨーロッパ全体のガス削減目標15%、もしくはそれ以上をも達成することが可能となります。

 

住居で使うエネルギー、国全体の使用量の30%

住居におけるエネルギー使用量は、国全体の使用量の約30%、450 000 GWh(ギガワット時)になります。うち電力は162 000 GWhですが、これはエッフェル塔21 600基分の1年間の消費電力にあたります。

ネガワットによると、この住居部門のエネルギー使用量の実に30%(ガス30%、灯油36%、電力28%)は、国民一人一人の節電努力で削減することができます。

中には「馬鹿馬鹿しい」と思うようなわずかな節電努力もありますが、それをフランスの約3000世帯で行えば大きな節電効果になることが、発表されたレポートの中に数字で現れています。

冬の暖房温度19℃に制限で、57都市分の省エネ

最も効果の高い省エネ行為は、暖房の温度を19℃までに抑えることです。これはすでに政府が公共の建物などに適用すると発表しています。

この冬、フランスの80%の住居が実行すると23 500 GWhもの節約ができます。ちなみにこれは人口10万人の57都市が使用する1年間のエネルギー量に相当します。

未使用電源スイッチオフで、シャンゼリゼのイルミネーション57回分の節電

以下、国民の80%が実行した場合の省エネ量(GWh)

・使用中でない電子機器、スクリーンなどの電源を切る 11400 GWh

・シャワーや蛇口からの水量調整器(リミッター)の設置  8200 GWh

・窓ガラスに断熱フィルムを装着 6900 GWh

・お湯の使用を制限する(フランスでは洗濯は40℃、食器洗いも通常お湯を使用) 6500 GWh

・不必要な場所の電球は減らし、古い電球はLEDライトに替える 1500 GWh

これ以外にも、ちょっとハードルが高そうな「インターネットを使用していない時間帯はモデムのスイッチを切る(3100GWh)」といったものがあります。

鍋には蓋を、オーブンは余熱も利用

また、「料理中の省エネ」(2200GWh)では、「鍋やフライパンで料理する際に蓋を利用する」「冷凍食品を減らす」「オーブンを加熱時間の前で止めて余熱を利用する」など習慣づけるのに時間がかかりそうなものもあります。

ネガワットによると、国民の80%が電源を入れっぱなしにしている電子機器のスイッチをオフにするだけで、シャンゼリゼ大通りのクリスマスイルミネーションで使用する電力の57万倍の節電に繋がります。

 

交通部門の省エネは「減速」あるのみ

交通に関しては、「走行速度を落とす」が13500GWhとダントツで省エネ対策の1位になっています。

地道な努力としては、「相乗りをする」(2000GWh)、そして社員を家から近い事務所に転勤させる(700GWh)といった会社側には難しそうな推奨案もありますが、実現するとフランス南西部ジロンド県(Gironde)の太陽光発電所2つ分が1年間に生み出す電力を節約できます。

 

事務所の空調の省エネ、電子レンジ2億2200万個分の節電

オフィスでも暖房の温度を19℃までに下げることで22000GWhの省エネになります。次いで、誰もいない事務所や店舗の空調設備を切ることで18000GWhもの節約ができます。夏のクーラーの温度を26℃に設定するなど、企業には様々な省エネ要素があります。

また興味深いのは、「省エネ担当責任者を任命する」ことにより5000GWhの省エネになるといったソフト面での推奨です。

 

フランス人「全員の参加」必須、企業の役割も重要

ネガワットの企業担当サミュエル・マルタン(Samuel Martin)氏は、現在エネルギー危機が騒がれていることから、いますぐ行動に移すと言っている人は少数とはいえ存在するものの、「国全体で本格的な省エネを行うには、全ての人の参加が必要」であり、そのためには「企業の果たす役割が非常に大きい」と述べています。

つまり、自宅に一人でいる時は省エネしない人も、地下鉄に乗ったら広告の看板の電気が消えていたり、オフィスに着いたら省エネ担当者が帰宅時に「パソコンのスイッチをオフにしてください」と声をかけたりされるうちに、家でも節電するようになるわけです。

コロナ禍で証明、国民一人一人の努力

今回政府が行う省エネキャンペーンは、新型コロナの際ソーシャルディスタンスを促すときに使われた手法と同じく、「あちこちで目にふれさせ、時にはユーモアを交えるなどして、国民一人一人の参加を促すことが重要だ」とマルタン氏は説明しています。

執筆:マダム・カトウ

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