エネルギーと一時原料の価格上昇により、フランスのパン屋はバゲッドの価格を上げるという苦渋の決断を迫られています。
インフレなぜパンの材料に影響?
インフレは、あらゆるパンの材料に影響を及ぼしています。
まず、ウクライナ侵攻による小麦価格の上昇です。小麦粉の入荷においては、卸業者がコストを吸収するなどの努力をしてきましたが、それでも価格上昇を抑えることができなくなっています。
ベーキングパウダーや、パンを包装する紙の価格上昇も顕著です。
また、慢性的に続いている、人件費の上昇も響いています。パンの価格の約半分は、製造にかかるコストであるためです。
「バゲッドの価格を上げないパン屋はつぶれるだろう」
ヨーロッパのなかで見ると、フランス以外にもドイツやスペインなど、フランスよりも顕著にバゲッドの値上がりを経験している国もたしかにあります。
しかしフランス全国パン・菓子連合会(la Confédération nationale de la Boulangerie-Pâtisserie française, CNBPF)の、ドミニク・アンラク(Dominique Anract)会長によると「エネルギーは、パティスリーでいうチェリーの部分」だといい、その分今回のインフレはパン・菓子産業に大きな打撃となっています。
アンラク氏は、インフレ対策としてバゲッドの価格を上げることも致し方ないとして、消費者の理解も得られるだろうと発言しています。
10-15%の値上がりを予測
例えばフランス国立統計経済研究所(Institut national de la statistique et des études économiques, INSEE)の発表している、バゲッドの平均価格をみてみると値上がりは明らかです。
2021年8月時点では90セントほど(約126円)で売られていた「バゲッド・クラシック(baguette classique)」は、今年は94.5ユーロセント(約132円)に値上がりし、今後1ユーロ(約140円)まで上がると予測されています。
また「バゲッド・トラディシオン(baguette tradition)」は1-1.30ユーロ(約132〜182円)が相場ですが、エネルギー価格が上がれば、10-15%の値上がりにつながるとCNBPFは予測しています。
*バゲッド・トラディシオンは、バゲッド・クラシックと異なり、冷凍の工程を経ず、保存料をつかっていないなど製造工程に規制がかかっているバゲッドです。
パン屋ごとの戦略に注目
ただし全てのパン屋が今後値上げをするというわけではなく、数セントずつ徐々に上げていくとされています。また、従来から価格差もあるため、一部のパン屋での値上がり後の価格で、すでに同じ種類のバゲッドを販売しているパン屋もあります。
このように、フランスのパン屋は、インフレによって価格の戦略についての判断を迫られているのです。
執筆あお