今年もいよいよ始まったフランスの夏のバーゲンセール「ソルド」(Solde)、今年は6月27日~8月7日までの6週間行われます。eコマースの発達で、毎年その存在価値が問われるソルドですが、今年も議論が巻き起こっています。
フランスの伝統、「ソルド」の期間は国が決定
フランスではソルドと呼ばれる「バーゲンセール」と、「プロモーション」と呼ばれるそれ以外のセールがあり、「ソルド」という名称を使った夏と冬の年二回バーゲンセールの時期とルールは、国で決められています。(地方により若干時期がずれます。)
eコマースの台頭で意味が薄れ
フランスのソルドの規定は、そもそも商店の不当な競争を規制する目的で作られました。ところが、期間を問わず年中安く販売するeコマースの台頭でその意味が問われています。
近年eコマースが実店舗を脅かし始めたことにより、数年前から「プロモーション」など、ソルド以外の名称を使った割引セールが年数回、商店の好きな時期に行うことが認められるようになりました。
もうソルドはやらない?企業
デザイン性が高く手ごろな価格の家具や日用雑貨を販売するIKEA(イケヤ:スウェーデン本社)は、2017年秋からソルドなどの季節バーゲンセールを限定的(一部の商品などに)にすると発表しています。
イケヤ以外にも婦人服のPrimark(プリマーク)、コスメのKIKO(キコ)、乗用車のDacia(ダチア)、DIYチェーンのBrico Dépôt(ブリコデポ)、さらにローコスト航空会社easyJet(イージージェット)などは、期間限定のバーゲンセールをやっていません。
「エブリデイ・ロープライス」を目指す
これらの企業は、アメリカスーパーチェーン最大手のWalmart (ウォルマート)の有名なスローガン「Everyday low price」(いつも低価格)にならってか、定期的なプロモーションやバーゲンセールを止め、通年で低価格を提供する戦略とっています。そして、こういった企業は全体の10%に上ります。
注)ウォルマート社のスローガンは現在変更されています。
バーゲンセールのスパイラルから抜ける
バーゲンセールは言い換えれば、消費者を「限定された期間に購買する」ように仕向けています。
Daciaはセールを止めた成果もあり、2017年には前年対比24%の売上増、低価格の婦人服で人気のPrimarkは2016年にフランスの店舗での売上が前年比32%上昇しています。
フランス人はもう服を買わない?
フランスの衣料の売上全体は、2017年に前年対比で0.8%と微増したものの、2018年の1月~5月までの5ヶ月間で前年より3.6%も下がっています。さらに、リーマンショックで経済危機になった2008年以降の過去10年間でみると、なんと14%も落ちています。
衣料とくに婦人服は近年ZARAやH&Mなどの台頭で、新商品が次から次へと出るのが当たり前になり、供給過剰による購買意欲の減少に陥ったこと、そしてなんといっても婦人服の価格の下落が全体の売上減の原因となっています。
婦人服の生産拠点はよりコストの低い国へと移転されていったためですが、不思議なことに紳士服の価格は8%上昇、婦人服よりフランス製の占める割合が多いことが理由に挙げられます。
2019年には期間短縮
今年も6週間の夏のソルドですが、経済財務大臣(Ministre de l’économie et des finances)ブリュノ・ル・メール(Bruno Le maire)は、「来年からたぶん6週間を4週間に短縮するだろう」と発言しています。
開始日は例年通り冬は1月第2水曜日、夏は6月の第4水曜日のままになる可能性が大と言われています。商店側も期間を短縮することで「今買わなくては」と言う性急感を高められると、期間短縮を歓迎しています。
果たして今年の夏のソルドは盛り上がるでしょうか?
執筆:マダム・カトウ