7月1日(日)より、フランスの国道(route nationale)、県道(route départementale)の制限速度が現在の時速90kmから80kmになります。
フランス全道路網の約40%が対象
今回の制限速度改正の対象になるのは、国道と県道の2車線道路(および3車線道路の1車線側)で、中央に縁石かガードのない道路です。これらの道路は、都市部よりも地方の田舎道などに多数存在しています。
フィリップ首相は、フランスの交通死亡事故の55%がこれらの道路で起こっていることから、「この改正で年間300~400人の命が救える」と、今回の改正理由を述べています。
道路交通安全委員会(délégation à la sécurité et à la circulation routières (DSCR))によると、制限速度を80kmに下げることで車間が13メートル広くなり、41kmの距離を時速90kmで走った場合と80kmで走った場合で、時間のロスはたったの3分20秒と発表しています。
影響の多い県は?
GPSと地図システム制作会社TOMTOMが調査したところ、南西フランスのドルドーニュ県(La Dordogne)(約1万キロが対象)、北西フランスのマンシュ県(La Manche)、南フランスのアヴェロン県(Aveyron)にもっとも対象道路が多く、逆に今回の改正でまったく影響を受けないのは、パリとイル=ド=フランス地域圏(Île-de-France)の県道でした。
標識はだれが変える?
内務省(Le ministère de l’Intérieur)によると、フランス全土で約1万1千個の標識の交換が必要で、その費用の合計は600万ユーロ(7億7000万円)から1200万ユーロ(15億4000万円)に上ります。この費用は一旦県が負担し、後日国から返金されることになります。
今回の改正は国民だけでなく、県など地方自治体にも不評で、なかには標識を取り替えないところもでています。
反対派の県、標識変えず
中央フランス、クルーズ県(la Creuse)のヴァレリー・シモネ(Valérie Simonet)県議会議長(Présidente du conseil départemental)は、「事前の(地方自治体への)協議もなく、(国が勝手に)決めたわけだから、国が自分たちで標識の取替えもやればいいわ」と、ラジオ局フランスブルー(France Bleu)のインタビューに答えています。
ちなみに、今年の3月、フランスの27の県議会議長たちが首相に抗議の手紙を送っています。
また、オート=アルプ県(Hautes-Alpes)は、国への抗議のためか、制限速度が70kmだった道路を逆に80kmに上げる変更をしています。
標識が90kmのままでも80kmを超えると罰金
一部の県の抵抗もあり、90kmのままの標識がしばらく残りそうですが、制限速度が80kmに改正されているため、標識が変わってなくても80kmを超えて走ると罰金の対象になります。
政府の交通安全担当代表(délégué interministériel à la sécurité routière et délégué à la sécurité routière et à la circulation routières)のエマニュエル・バルブ(Emmanuel Barbe)は、「すべてのドライバーは道路交通法を守って走る義務があり、標識はあくまでもルールを思い出させるための目印に過ぎない。よって、標識が変わってないことを理由に罰金の抗議をすることはできない」とし、標識の速度に関係なく80kmの遵守を呼びかけています。
2年間の実験施行
フランス国民の75%が反対している今回の制限速度改正ですが、マクロン大統領は「今回の制限速度の改正は2年間の期限付きテスト施行、実験結果は包み隠さず開示していく」方針を示しています。また、結果が出なかった、もしくはあまりにも地方により差が激しい場合は、「止めるか県議会に決定をゆだねる」などの対策をとるとし、「あまり過激に反応しないよう」呼びかけています。
2年後の2020年には道路での死亡事故が期待通り減っているでしょうか?これから夏のバカンスシーズンに入るフランスですが、地方へ車で出かける際は、標識の速度にかかわらず注意が必要です。
道路交通安全委員会(délégation à la sécurité et à la circulation routières (DSCR))のサイトはこちら
執筆:マダム・カトウ