フランスの生徒の学力低下、世界ランキングで過去最低のワケ

2026.09.11

Richard Villalon – stock.adobe.com

2026年9月11日(金)、経済協力開発機構(OECD)が世界91か国で実施した学力テスト(PISA)の結果が発表され、フランスは前年からさらに順位を落とし、対象となった91か国中27位となりました。新学期が始まった直後のこのニュースに、教育省をはじめ学校関係者らは衝撃をうけています。ここ数年間、順位の下落が止まらない理由の追究や解決策などに関する専門家の意見を地元メディアが報道しています。

 

フランス 数学が急降下、国語も悪化の一途

PISAと呼ばれるこのテストは、OECDが3年に一回、世界の15歳の児童を対象に、算数、国語の読解力と筆記、理科の3科目を中心に実施するものです。調査は、学力以外に生徒の学習への取り組み、保護者によるサポートの程度、さらに社会環境が学業成績に与える影響なども考慮しています。

今回発表されたのは昨年実施されたテストの結果で、フランスはOECD加盟国37か国では平均値を維持してはいますが、前回2022年から数学で16ポイント、国語で18ポイント、科学は4ポイントと点数を下げ、ランキングでは順位を1位落としています。

メディアの取材に応じたエドワール・ジュフレー(Édouard Geffray)教育相は、「非常に深刻だ」と懸念を表明する一方、この結果には「驚いていない」と述べています。

世界的に学力レベルは下がる一方

確かにフランスの児童の学力はさらに低下し、順位を下げていますが、OECDによるとこの傾向は世界的なものなのです。

前回の調査から3年で、OECD加盟国では平均して科学で3ポイント、国語読解力で14ポイント、数学で9ポイントも点数が下がっているのです。さらに、この調査で学力が「不十分なレベル」とされた生徒の割合は、22年では全体の17%でしたが、今回は20%に増えています。

 

フランス、社会経済的要素による学力格差が激しい

OECDによると、生徒がおかれた社会経済的環境は、学力を左右する主な要因の一つですが、フランスは社会的格差という観点からみると他国とは異なる特徴を示しています。

例えば、科学において、もっとも社会的に恵まれた生徒上位25%と最も恵まれない下位25%の生徒との点数差は100ポイントもあります。これは、今回の調査参加国全体の平均85ポイントを15ポイントも上回っています。

これについて、教育問題を専門とする社会学者、マリー・ドゥリュ=ベラ(Marie Duru-Bellat)氏は、「フランスでは学力の低い生徒の学力を、ほかの生徒のレベルまで引き上げる方法がわかっていない」と説明しています。

解決策として、同氏は教員に対し、学習が困難な生徒への指導法の研修を充実させること、を挙げています。

親が子供の教育に無関心

今年発表された調査結果では、「親が学校の授業について、少なくとも週に一回は質問する」と答えた生徒は63%でした。これは3年前の74%から大幅に減っています。

OECDのフランス人教育アナリスト、エリック・シャルボニエ(Eric Charbonnier)氏は、「現代の社会問題、地政学問題など、親を取り巻く社会環境の変化で子供の教育への優先順位が下がった」ことを要因に挙げています。

しかしながら、調査結果では、親のサポートが充実しているほど子供の学業成績が上がることが指摘されています。

スマホとAIの影響も指摘

社会経済的な格差だけを学力低下の最大の要因と指摘することはできません。なぜなら、今回学力の低下が著しいのは上位25%の生徒だからです。

この現象について、様々な仮説が立てられていますが、その一つとして人工知能AIの利用が挙げられています。シャルボニエ氏によると、「AIの利用拡大と科学分野の成績の低下には相関性がある」と指摘しています。2022年からの調査では、AIの利用状況も分析しています。

これは、AIの利用の良し悪しを決めつけるものではありません。授業にAIを積極的に活用するシンガポールの生徒は科学分野で高得点をあげています。

政権交代のたびに教育改革、かえって不毛

学校内のスマホ利用に関して特記すべきは、科学の授業などで「スマホに気を取られて集中していない他の生徒がいる」と回答した生徒が全体の4分の1もいることです。

シャルボニエ氏は、フランスでは政権が変わるたびに教育改革が行われるものの、改革がどういう結果をもたらしたか分析する前に、次の政権が新たな改革を導入しています」と述べ、教育方針の継続性の欠如により、悪影響をもたらしていると指摘しています。

来年の大統領選で、さらに大きな改革や変更が行われることが危惧されている、と同氏は締めくくっています。

出典:20minutes, FranceInfo, PISA公式サイト

執筆:マダム・カトウ

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