今回は日本の線香に似た、フランスのお香についてご紹介します。フランスにも、燃やすことで、同じように匂い消しや香り付けに使われるものがあります。その名は、「papier d’Arménie(アルメニアの紙)」です。
フランスのお香 アルメニアの紙とは?
新年を迎え、初詣で仏閣を訪れ、線香の香りに癒された方も多いのではないでしょうか。日本の線香は、文字通り線のように細いお香で、伽羅や白檀などの香木を使ったものが多く、独特の芳香を漂わせます。
こちらの写真は安息香の木の樹脂の香りを用いたものです。時は19世紀。フランス人化学者オーギュスト・ポンソは、アルメニア人が、家の殺菌のために安息香を燃やすのを目にしました。
これにヒントを得たポンソが、薬剤師アンリ・リヴィエの協力を得て作ったのが「アルメニアの紙」。安息香を90%のアルコールに溶かしたものを吸い取り紙と組み合わせたもので、1885年よりモンルージュで製造されるようになりました。
アルメニアの紙の効能は?
1888-89年の衛生展覧会に出品して成功を収めたほか、多くの国際展覧会で賞を獲得しました。効能として挙げられたのは、空気の浄化、ダニ退治、揚げ物や煙草、動物の匂い消しなど。
実際には空気を浄化するとは考えにくいものですが、匂い消しとしては有能なようで、今でも好んで使うフランス人が多くいます。その形状は日本のあぶらとり紙に似ていて、12枚の小さな紙を綴じた冊子の形をしています。
一枚の紙は切り取り線で3枚に分かれるようになっていて、それを一枚ずつ使うので、合計36回使うことができます。
アルメニアの紙の使い方
一回分の細長い紙は、アコーデオンのように折り曲げて火をつけ、線香同様、炎は消して、くゆらせるのが正しい燃やし方です。線香に比べると燃え尽きるのは早いですが、後には同じようになんだか懐かしい香りが残ります。
アルメニアの紙はどこで買える?
この「アルメニアの紙」。今ではバラの香りのものなども出ているようです。面白いことに、売られているのは薬局。スーパーなどでは手に入りません。薬剤師の手によって生まれたものだからかもしれませんね。